社説

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 神戸市灘区で神戸製鋼所が増設中の石炭火力発電所を巡り、環境影響評価(環境アセスメント)を認めた経済産業相の確定通知は違法として、周辺住民らが通知取り消しを求めた行政訴訟の控訴審判決で、大阪高裁が一審大阪地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。

 地球温暖化につながる二酸化炭素(CO2)の大量排出を「人権侵害」と主張する住民らに対し、高裁は「原告適格」を認めなかった。アセスの適正さを争えないならCO2放出も野放しになりかねない。温暖化を見過ごす司法判断と言うしかない。

 一方で高裁は、日本の温暖化対策に「さまざまな、大きな、重要な課題がある」と認めた。国が掲げた2030年の温室効果ガスの削減目標(アセス時点で13年度比26%減、現在は46%減)にも「実現の具体的な道筋が示されているとはうかがえない」と厳しい見方を示した。

 取り組みの甘さを司法から指摘された事実を、政府は重く受け止めなければならない。

 裁判の大きな争点は、CO2排出に関して裁判で訴える資格が原告にあるかどうかだった。控訴審で、住民らはCO2による気候変動の被害を受けない権利があると主張したが、判決は「個人の利益とまでは言えず、現時点で国際的、国内的に議論が成熟しているとも言えない」として権利を認めなかった。

 だがオランダでは19年、最高裁が気候変動による被害を人権侵害に当たると認めている。大阪高裁の判断は脱炭素の国際的な流れに反するものだ。

 高裁判決は原告適格としなかった判断に関して「今後、社会情勢の変化によって個人的利益と承認される可能性を否定するものではない」とも述べた。

 ただ温暖化対策は喫緊の命題である。今年、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は「世界の温室効果ガス排出量のピークを、遅くとも25年以前に迎える必要がある」との見解を示した。「今後」を待つ時間的余裕はない。

 石炭火力を活用し続ける日本は国際社会から厳しい批判を浴びている。原告は上告したが、政府は最高裁の判断を待つことなく、「脱石炭」にエネルギー政策のかじを切る必要がある。

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