社説

  • 印刷

 戦禍のウクライナから逃れた人々を念頭に、岸田文雄首相は「準難民」制度の創設に意欲を示す。手厚い支援は当然だが、現状は避難民の扱いとなっている。今後の戦況によっては、さらに増える可能性がある。政府は人道的な見地から難民認定基準を早急に見直し、入管行政を抜本的に改革しなければならない。

 ウクライナから国外に逃れた避難民は590万人を超えた。日本にも850人以上が入国している。

 入国者には90日間の短期滞在で在留資格を付与し、希望すれば1年間働ける「特定活動」への切り替えを認める。政府は滞在先の確保、生活費や医療費などの支給、日本語教育や就労支援の実費も負担する。

 他国の軍事侵攻を理由にした避難民に対し、政府は国際条約上の「難民」には該当しないとの厳格な立場を取る。今回の支援はあくまでも人道的配慮に基づく「特例」だ。緊急対応としては評価できる一方で、法的な位置付けはあいまいである。一連の受け入れ対応を検証しつつ、法制度を整えていく必要がある。

 首相は「準難民」制度の検討に際し、「『この国が良くてこの国が悪い』というダブルスタンダード(二重基準)にならないように」と述べた。ウクライナに限らず、中東やアジア、アフリカなどから避難してきても難民認定されず、苦しむ人は少なくない。全ての国や地域の人々が等しく対象になる制度にしたい。

 問題の根幹にあるのは日本の門戸の狭さだ。難民条約に加盟した1982年以降、認定者は841人にとどまる。他の先進国では数十%の国もある認定率も1%程度にすぎず、「難民鎖国」と批判される。準難民創設で難民に認定されない人を増やすより、国際基準に照らして厳しすぎる認定を見直す方が望ましい。

 気がかりなのは、昨年廃案になった入管法改正案を再提出する動きである。改正案には、準難民と同様の概念が「補完的保護対象者」という名称で含まれていた。5年間の定住者資格を与え、就労や国民健康保険への加入、家族の呼び寄せなどを可能とする。だが強制的な送還や監視強化などが「人権軽視」との反発を受け、成立を断念した経緯がある。

 ウクライナとロシアの避難者への食料支援に当たる、CODE海外災害援助市民センターの吉椿(よしつばき)雅道事務局長は「日本では入管が認定の実務を担っているため、難民を保護の対象とする視点が弱い。準難民など要件を増やすだけでは根本的な解決にはならない」と指摘する。

 「鎖国」を返上し、「人道大国」を目指す。国際社会の信頼を得るためにも、一貫性のある難民政策への転換点とすべきだ。

社説の最新
もっと見る
 

天気(7月5日)

  • 29℃
  • ---℃
  • 70%

  • 32℃
  • ---℃
  • 50%

  • 29℃
  • ---℃
  • 70%

  • 30℃
  • ---℃
  • 70%

お知らせ