社説

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 小学生が柔道の個人戦で日本一を争う全国小学生学年別大会が、今年から廃止された。主催の全日本柔道連盟(全柔連)は廃止の理由を「行き過ぎた勝利至上主義が散見され、好ましくない」と説明した。大会を巡っては、10年ほど前から指導者や保護者ら大人の「暴走」ともいえる言動が問題視されていた。

 階級別に実施される同大会に向けて子どもに10キロもの減量や増量を強いる、けがの恐れがある無理な体勢からの技を教える、審判員や対戦相手に罵声を浴びせる-。いずれも実際にあった事例だという。

 目先の勝ちにこだわるあまり、子どもの心身の成長を軽んじる指導はあってはならない。勝利至上主義は子どもからスポーツをする喜びを奪うだけでなく、発育に悪影響を及ぼす恐れがある。どの運動競技に関わる大人も肝に銘じるべきだ。

 大会の廃止に伴い、全柔連は「原点に戻り、柔道の教育的価値を見つめ直す」と述べた。若年層の育成に関わる他の競技団体や教育現場、保護者らも問題意識を共有したい。それぞれの指導方法や大会のあり方について、立ち止まって考える契機としてほしい。

 勝利至上主義への反省から動き出した組織もある。日本バスケットボール協会は2018年から全国ミニバスケットボール大会を、優勝チームを決めない「交歓大会」に変更した。日本スポーツ協会は、スポーツ少年団が行う軟式野球、剣道、サッカー、バレーボール、ホッケーの5競技の全国大会を見直す方針だ。

 一方、見直し論議に対しては「全国大会を目指す子どもがかわいそう」「厳しい競争や指導があった方が伸びる」などの反論もある。

 勝つために子どもが主体的に努力したり、仲間と協力したりする素晴らしさは否定できない。だが「苦しさや厳しさに耐えてこそ」という考えがエスカレートすれば、弊害が起きうる。最たる例が指導者や保護者らによる暴力や暴言である。

 全柔連の学年別大会では、親が試合に負けた子どもの胸ぐらをつかんで壁に押しつける場面が見られたという。中学や高校の部活動で、顧問らが暴力を振るうケースが後を絶たないのは、我慢を強いる指導法が横行している証左といえる。

 理不尽な指導や過度の練習で自信を失い、競技が嫌いになる小学生がいると聞く。けがで将来の芽を摘む結果になれば、まさに本末転倒だ。特に幼少期はスポーツの楽しさを体験させることが重要だろう。

 成長期にある子どもには、長期的な視野での指導が求められる。競技団体は危機感を持って指導者の啓発や研修に取り組んでもらいたい。

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