社説

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 阪神・淡路大震災の発生から、きょうで1万日目を迎える。

 6434人の命が失われ、いまも3人が行方不明となっている。全半壊した住宅は25万棟に上る。道路や鉄道網が寸断され、ライフラインも途絶した。被災で暮らしの営みが絶たれるなど、生き残った一人一人にもさまざまな困難が降りかかった。

 いま街を歩いても、すぐにそれと分かる被災の痕跡は見当たらない。震災を直接知らない世代が社会で活躍するようになった。だが、たとえどれほどの月日が流れようと、かけがえのない家族や友人らを失った人々の悲しみが癒えることはない。

 亡くなった方々を悼み、震災の記憶と教訓を次の世代にしっかり伝えていかねばならない。

 阪神・淡路では、犠牲者の8割が圧迫死とされる。住宅の耐震基準の強化など防災・復興対策が見直された。住宅再建に支援金を給付する被災者生活再建支援法など新たな制度がつくられる契機ともなった。

 一方で震災関連死や独居死など、その後の災害でも繰り返し指摘される重い課題を突きつけた。復興には濃淡があり、必要な支援は続けたい。一人一人への心遣いが、誰も取り残さない復興への鍵を握る。

 人と人とのつながりも大切だ。阪神・淡路の体験者は「悲劇を繰り返してはならない」と、他の災害の被災地と交流を続けている。

 今年4月、神戸と東北の有志らが「全国災害ボランティア支援機構」を設立した。阪神・淡路を原点とする災害ボランティアの裾野を広げようと、環境整備に力を注ぐ。

 阪神・淡路の被災地には延べ137万人が駆けつけ、「ボランティア元年」と呼ばれた。その後も風水害や地震が相次ぎ、役割や存在感は増している。だが人員の確保や活動をどう支えるかなど課題も多い。

 代表理事の高橋守雄さんは「全国からいただいた支援への恩返しをしてきた1万日だった」と振り返る。交通費や宿泊費などの助成制度創設を掲げ、35万人分の署名を国に提出したが、実現していない。高橋さんは「若い人たちを後押しする制度づくりは、私たちの責務だ」と話す。兵庫県は先駆けて支援制度を導入した。全国への拡充を図るべきだ。

 忘れてはならないのは、災害はまた必ず来るということだ。

 支援者と被災者はいつでも入れ替わる。防災や減災、自助・共助・公助の仕組みなど震災から生まれた実践を定着させる努力が欠かせない。

 教訓を「わがこと」とし、次の災害への備えを高める。命を守り、人を大事にする営みを根付かせ、生かす誓いを新たにしたい。私たちは立ち止まってはいられない。

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