社説

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 先週末からKDDI(au)の情報通信網で携帯電話の音声通話やデータ通信が利用しづらくなる事態が発生し、最大3915万回線に支障が出た。きのう夕方に「完全復旧」が確認されるまで、ほぼ4日にわたって不具合と混乱が続いた。

 携帯電話業界では、昨年10月にNTTドコモが通信障害を起こし、延べ約1290万人以上に影響した。2018年12月のソフトバンクの通信障害は3060万人が巻き込まれた。

 今回はそれを上回る規模となり、復旧までに例がないほどの長い時間を要した。過去の教訓を生かせなかったことをKDDIは重く受け止めるべきだ。携帯業界全体で共有し、再発防止に万全を期してもらいたい。

 問題が起きたのは2日午前1時35分ごろである。定期メンテナンスで音声通話に関する機器の交換時に不具合が生じた。それをきっかけに回線へのアクセスが集中し、通信量を制御する対策を講じたことで、通話とデータ通信がともに利用しづらい状態になった。

 一つのトラブルがドミノ倒しのように問題を広げる。生活に欠かせない情報通信網の弱点を改めて露呈したと言える。

 昨秋のドコモの通信障害も設備工事のトラブルが引き金になった。不具合を初期段階で抑え込む重要性が指摘されたが、その教訓が工事の手順構築や通信網の設計に十分に反映されていなかったことになる。

 深刻な影響の一つが110番や119番通報の支障である。体調を崩してやむなく消防署に駆け込んだ人がいた。遭難した登山者がスマホで救助を要請できず、発見と救出に時間がかかったケースもあった。

 さらに銀行のATMが利用不能となり、宅配業者が荷物の配送状況を確認できなくなるなど、枚挙にいとまがない。台風4号が接近する中、地域気象観測システム(アメダス)のデータ配信も一時停止した。

 利用者への詳しい情報提供が後手に回ったことが、携帯などのアクセス殺到を招いた要因とされる。総務省は社会に混乱を与えたことを重視し、厳しい行政指導を検討する。徹底的に原因を究明し、具体的な対策につなげていかねばならない。

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