社説

  • 印刷

 少子高齢化が進み、年金や医療、介護などの社会保障制度が揺らいでいる。2025年には「団塊の世代」が全て75歳以上の後期高齢者となり、65歳以上の高齢人口はピークの40年に向けて増え続ける。一方で21年の出生数は過去最少を更新した。制度の維持へ、給付と負担のバランスをどう図るか。喫緊の課題だが、参院選での論戦は不十分と言わざるを得ない。

 物価高の中、国民年金は4月分から前年度比で0・4%引き下げられた。支給額改定の指標とする現役世代の賃金水準が下がったためだ。少子高齢化に合わせ支給額を抑える仕組みにより、将来的には給付水準は約3割も下がると見込まれている。

 政府は正社員が入る厚生年金の範囲を拡大し、パートや非正規の短時間労働者も給付対象とする「勤労者皆保険」を打ち出す。企業の要件を10月に「従業員101人以上」、24年10月には「51人以上」へと引き下げる。保険料負担が増える事業主の理解を得るのはこれからで、自営業者が対象外なのも課題だ。

 今年10月から、一定以上の収入がある75歳以上の医療費窓口負担が1割から2割に引き上げられる。ただ現役世代の負担軽減効果は1人当たり年約700円で、根本策には程遠い。

 介護保険でも負担増の可能性がある。サービス利用時の自己負担は原則1割だが、財務省は2割負担の対象拡大を求める。

 社会保障制度の持続へ道筋を示すのは政治の責任だが、負担の在り方への言及は乏しい。

 自民、公明両党は「全世代型社会保障の構築」を掲げる。現役世代の不公平感にも配慮し、子育て家庭への支援策などもアピールするが、消費税率は維持し負担増の議論は封印する。

 立憲民主、共産、国民民主の各党は、最低保障機能を強化する年金制度を公約する。日本維新の会は給付付き税額控除を主張する。野党は一方で消費税の減税・廃止を訴えるが、財源をどうするかは曖昧なままだ。

 国と地方自治体を合わせた借金は1200兆円を超える。これ以上の次世代への「つけ回し」は許されない。各党は、「痛み」を伴う議論から逃げてはならない。

社説の最新
 

天気(10月27日)

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 20℃
  • ---℃
  • 50%

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 23℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ