東日本大震災による東京電力福島第1原発事故を巡り、東電の株主が旧経営陣5人に対し総額22兆円を東電に賠償するよう求めた株主代表訴訟の判決で、東京地裁が勝俣恒久元会長、清水正孝元社長ら4人に計約13兆3千億円の支払いを命じた。
第1原発の事故で旧経営陣の賠償責任を認めた判決は初めてだ。地裁は「対策工事を実施していれば、津波による重大事故を避けられた可能性が十分にあった」と指摘した。
津波の予見可能性の判断を避け、対策をしても事故は起きたとした6月の最高裁判決とは大きく異なる。
賠償額は国内の民事訴訟で過去最高とみられる。個人が負担するには非現実的な巨額だが、原子力事業を担う経営責任がそれだけ重いことを示す司法判断の意味は大きい。
4人のうち勝俣氏と武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長は事故を巡って業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審では無罪だった。一方、今回の判決は「安全意識や責任感が根本的に欠如していた」と厳しく指弾した。旧経営陣は地震に関する専門的な知見を軽視し、惨事を招いた事実の重大さを受け止めるべきだ。
訴訟は事故翌年の2012年に株主らが提訴し、津波対策を怠ったために、廃炉や被災者への賠償金、除染などで会社に巨額の損害を与えたと旧経営陣の責任を問うていた。
争点になったのは、津波による事故を予見できたかどうかだ。02年、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)は「長期評価」で、福島沖などで大地震が起きうるとの見解を公表した。東電の子会社も最大15・7メートルの津波が来ると試算していた。
被告側は「長期評価は信頼性を欠く」と主張したが、地裁は「長期評価を踏まえて直ちに津波対策をすべきだった」との原告側の主張を支持した。地震本部は専門家が集まった政府の特別機関であり、信頼に足るとの判断は当然である。
また判決は、旧経営陣が津波試算の扱いを外部の学会に委託し放置した点について「対策を先送りした。著しく不合理で許されない」と断じた。原発の安全を守る姿勢に問題があったとの指摘には、東電の組織全体で改めて耳を傾ける必要がある。
地裁の裁判長らは、事故関連の訴訟では初めて第1原発の敷地内を視察し、法廷で「7カ月かけて書いた判決」と傍聴人らに語った。60回以上に及ぶ丹念な審理の末、地裁は、東電の旧経営陣が最低限の津波対策を指示すべき注意義務を怠った事実と、事故との因果関係を認めた。
原発は事故を起こせば深刻な被害を及ぼす。再稼働を目指す各原子力事業者の経営陣も、今回の判決内容に真摯(しんし)に向き合ってもらいたい。








