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 韓国の朴振(パクチン)外相が初来日し、岸田文雄首相や林芳正外相と相次いで会談した。5月に就任した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は日韓関係の改善を掲げており、外相派遣もその一環といえる。日本政府には韓国への不信感が根強いが、信頼の再構築へ、対話を加速する契機にしなければならない。

 会談は安倍晋三元首相の死去に対し、弔意を伝えたいと韓国側が打診して実現した。

 最も深刻な懸案である元徴用工問題を巡り、日本は1965年の日韓請求権協定で「解決済み」との立場を取る。しかし韓国の最高裁は日本企業に対して賠償を命じ、差し押さえられた資産が今夏にも現金化される恐れがある。そうなれば日本も対抗措置を取る構えで、両国関係の一層の悪化は避けられない。朴外相は岸田首相に対し、「現金化される前に解決策が出せるよう努力する」と明言した。

 期限が迫る中、尹政権は官民合同の協議会を設け解決への意欲を示す。だが原告の一部が日本企業の賠償を求めるなど、先行きは不透明だ。日本は解決に向けた責任は韓国側にあると非難するばかりでなく、尹政権の努力を後押しする必要がある。

 朴外相は、元慰安婦問題についても2015年の日韓合意を公式合意として尊重する考えを示した。「最終的かつ不可逆的な解決」を確認しながら、文在寅(ムンジェイン)前政権がほごにした。岸田首相が外相時代に直接関わった案件でもある。朴外相は「日本側の呼応を期待する」と述べており、日本も歴史問題への謙虚な姿勢を忘れずに、合意に基づく解決を急ぐべきだ。

 国際情勢に目を向ければ、ロシアによるウクライナ侵攻や中国の軍備増強、北朝鮮の核ミサイル開発への対処など、日韓共通の課題が山積している。安全保障を巡り、米国を含めた3カ国の緊密な連携が揺らぐような事態は避けねばならない。

 気がかりなのは、尹政権の支持率が30%台に急落していることだ。過去の政権では支持率低下で対日強硬路線に転じるケースが多かった。両国は関係改善の好機を逃してはならない。

 日韓首脳会談は2年半以上開かれていない。今回の来日を、両首脳が率直に話し合える未来志向の関係構築につなげたい。

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