8月15日は、韓国では日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」に当たる。今年開催された政府の式典で、5月に就任した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が初めて演説した。
日韓関係は元徴用工や元慰安婦などの歴史問題を巡り「過去最悪」と言われるほど冷え込んでいる。そうした中、尹氏は「日本は共に力を合わせて進むべき隣人だ」と述べ、関係改善に強い意欲を示した。
文在寅(ムンジェイン)前大統領も昨年の光復節で「知恵を集めて困難を共に克服し」などと日本に呼びかけた。しかし、具体的な方策は語らず、関係改善にはつながらなかった。
尹政権に求められるのは、言葉だけでなく、解決に向けた意志と行動である。今後の動きを注視したい。前向きの対応には日本政府も踏み込んで協力する必要がある。
尹氏は大統領就任前から日本との「未来志向的な関係」に言及し、両国の首脳が相互訪問するシャトル外交の復活など、隣国関係の再構築を口にしてきた。
岸田文雄首相も「前向きに考えたい」と応じ、大統領選で当選した尹氏と電話会談を行い、関係改善に協力することで一致した。
7月に来日した尹政権の朴振(パクチン)外相も岸田首相や林芳正外相と会談し、大統領の考えを伝えた。これからは言葉をどのように形にするか、実行力が問われる段階になる。
最大の懸案は、韓国最高裁が日本企業に元徴用工への補償を命じた判決への対応だ。差し押さえられた日本企業の資産売却手続きが近く確定する可能性がある。日本は報復を示唆しており、売却に至れば関係修復の道はこれまでになく遠のく。
演説で、尹氏はそうした個別の懸案には触れなかった。だが、歴史問題について「両国の未来と時代的使命に向かって進む時、きちんと解決することができる」と述べた。
実際、尹政権は徴用工問題で官民共同協議会を設置し、早期の事態打開に動いている。ただ、元徴用工側がこれに反発しており、国内事情は複雑だ。日本も韓国側の取り組みを直接、間接的に支援するなど、解決に知恵を絞る必要がある。
尹氏は1998年の金大中(キムデジュン)大統領と小渕恵三首相(いずれも当時)による日韓共同宣言を「韓日関係の包括的未来像を提示した」と評価し、継承するとも語った。宣言がサッカーのワールドカップ(W杯)2002年共催や韓流(はんりゅう)ドラマ人気など、日韓「新時代」を開いた経緯を、日本の政治指導者も思い起こすべきだ。
支持率が20%台に急落し、逆風にさらされる尹氏だが、腰を据えて日本と対話を重ね、「共に進む」隣人同士の関係を築いてもらいたい。








