社説

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 これがトラックのトップメーカーの実態なのか。長年の悪弊の根深さにあきれるほかない。経営陣の責任は極めて重い。

 大型トラックやバスなどのエンジン性能のデータ改ざんを3月に公表した日野自動車で、小型用でも不正が見つかった。国土交通省が8月に行った立ち入り検査が発覚の端緒となった。

 その結果、国内向けのほぼ全車種を販売できない異常事態に追い込まれた。顧客や部品納入などの取引先は膨大な数に上る。出荷再開の見通しは立っておらず、影響は計り知れない。

 日野自動車を2001年に子会社化したトヨタ自動車は、多くの社長を送り込んできた。それだけにグループ管理体制が問われる事態だ。親会社として、再発防止と組織改革に積極的に関わる必要がある。

 立ち入り検査の前日、日野自動車はそれまでに分かった不正行為について、外部有識者による特別調査委員会の報告書を発表した。驚くのは、ユーザーが重視する環境性能を悪質な手口で偽っていたことだ。

 排ガスや燃費試験のデータを書き換えたり、数値を改善させるために測定装置を操作したりしていた。これらの行為は少なくとも約20年続いていた。三菱自動車による燃費不正を受けて国交省が16年に行った調査にも虚偽を報告した。

 「できないことをできないと言えない風通しの悪い組織」。特別調査委員会は、不正の要因をこう分析する。報告書によると、税制優遇を受けられる燃費性能を幹部が強く要求したという。達成に程遠い開発状況だったにもかかわらず、現場は「必達」と受け止め、数値の改ざんに手を染めたとされる。

 報告書は、経営陣について「現場に対するクルマづくりの『発注者』のような意識だったのではないか」と批判した。

 工場の課題を解決する姿勢に欠ける、売り上げや納期を優先するあまり品質保証を軽視する-。他の大手メーカーで起きた製品データ不正の問題にも通じる。意見を吸い上げ、活用する組織への刷新が不可欠だ。危機意識の共有が第一歩となろう。

 監督体制の点検も急ぐべきだ。不正を見抜けなかった国交省も反省しなければならない。

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