地球温暖化の影響で、「数十年に一度」とされる雨が、毎年のように全国のどこかで降っている。今夏も記録的豪雨による洪水や浸水、土砂災害が相次ぎ、命が失われた。
地震を含めて自然災害が頻発する日本ではいつ、どの地域が被害に遭ってもおかしくない。きょう1日は「防災の日」だ。99年前に関東大震災が起きた日である。一人一人が災害列島に生きていることを自覚し、命をどうやって守るのか、激甚化する被害の教訓に学び、話し合い、備えを再確認する日にしたい。
気象庁は6月から、豪雨災害をもたらす恐れのある「線状降水帯」の発生予測情報を発表している。線状降水帯は次々と発生した積乱雲が列をなすように形成され、ほぼ同じ場所で数時間にわたって激しい雨を降らせる。洪水や浸水、土砂災害の危険度が急激に高まる状況となる。
2018年の西日本豪雨や20年の九州豪雨など、線状降水帯による災害が続き、多くの犠牲者が出た。
教訓を行動に生かせるよう、土砂災害や浸水、津波など、自分自身がどんなリスクを抱える地域に暮らしているのか、ハザードマップなどで確かめておきたい。「緊急安全確保」や避難指示などの発令時、どこに、どう避難するかも考えておこう。
命を守る最も有効な方法は、安全な場所に早く避難することだ。
11年前の東日本大震災で津波の脅威が広く知られたにもかかわらず、その後に発令された警報では、避難しない人も少なくなかった。これでは、いつかまた多くの命が失われる事態が起きかねない。
どう行動すべきか。被災地の教訓に学ぶべきことはまだまだ多い。
岩手県釜石市の鵜住居(うのすまい)地区では津波で多数の住民が亡くなった。一方で、地元の小中学生が助け合いながら高台へ避難した行動が「釜石の出来事(奇跡)」と高く評価された。普段から実践的な避難訓練や津波防災教育に力を入れていた釜石の取り組みが、改めて注目を集めた。
同地区に19年3月にできた「いのちをつなぐ未来館」では、当時の児童生徒が語り部を務め、避難路の追体験や課題などを解説している。
同館を訪れた際、語り部の女性が「学校で教わったことをそのまま実践しただけです」と話していたのが強く印象に残った。被災者が寄せた「100回逃げて、100回来なくても 101回目も必ず逃げてください」の言葉も胸を打つ。災禍に遭う人を一人でも減らす。語り伝える意義は、ここにあるのだろう。
地震や豪雨は、いつ襲ってくるか分からない。命を守るために、防災教育の成果を家庭や地域、企業でも共有していく必要がある。
