東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件は、どこまで広がるのか。
スポンサー企業の選定で出版大手KADOKAWAから約7600万円の賄賂を受け取ったとして、受託収賄の疑いで、大会組織委員会の元理事高橋治之容疑者が東京地検特捜部に再逮捕された。
贈賄の疑いでKADOKAWAの元専務と社員も逮捕された。スポンサー企業で逮捕者が出たのは、AOKIホールディングス(HD)に続き2社目となる。スポンサー選定を巡るさらなる疑惑が浮上した。
高橋容疑者が賄賂として受け取った疑いのある資金は計約1億2700万円に上る。さらに同容疑者には大阪の広告会社大広からも1千万円超が渡ったとされ、疑惑は計3ルートになった。事実なら「平和の祭典」を私物化した行為であり、到底許されない。同様の問題がほかにないか、疑念を持たざるを得ない。
五輪を巡る利権の闇はどこまで深いのか。特捜部は、高橋容疑者が関係する不透明な資金の流れはもちろんのこと、組織委とスポンサーが絡む利権の構造や不正を生む背景などを徹底解明してもらいたい。
KADOKAWAルートでの高橋容疑者の逮捕容疑は、スポンサー選定などで有利な取り計らいを依頼され、2019~21年に10回にわたり入金させた疑いである。同容疑者は否認し、KADOKAWAの角川歴彦(つぐひこ)会長も潔白を主張する。AOKIHDルートでは同容疑者らは起訴された。今後の捜査と裁判で真相を明らかにし、厳正に対処してほしい。
特捜部は受託収賄容疑で、コンサルタント会社「コモンズ2」の代表を務める会社役員も逮捕した。高橋容疑者の電通時代の後輩で、同容疑者のコンサル会社「コモンズ」と似た社名だ。コモンズがAOKIHDルート、コモンズ2がKADOKAWAと大広ルートの資金提供の受け皿になったという。
会社の存在自体、利権の隠れみのになっていたと見られても仕方がないのではないか。
一方で看過できないのは、大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相が、AOKIHD側から現金を受け取った疑いが出てきたことだ。AOKIHDは高橋容疑者の仲介で森氏と接点を持ったという。がん治療への見舞金の可能性もあるとされるものの、詳細は分からない。森氏は自らの言葉で説明すべきだ。
巨額の資金が動く五輪は、過度な商業化が批判されてきた。札幌市は30年冬季五輪の招致活動を進めているが、東京大会の不正疑惑を抱えたままでは、世界からの信頼は得られない。政府と札幌市は招致について慎重に再考する必要がある。








