米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設問題などを争点とする同県知事選で、移設反対を訴えた無所属現職の玉城(たまき)デニー氏=立民、共産、れいわ、社民、沖縄社大推薦=が再選を果たした。移設容認を主張した元宜野湾市長佐喜真(さきま)淳氏=自民、公明推薦=ら無所属新人2氏を大差で破った。
普天間飛行場の県内移設に反対する沖縄の民意の根強さが改めて示された。同日実施の県議補選でも玉城氏が支援する候補者が当選し、議会の過半数を維持した。
移設反対派の勝利は2014、18年の知事選、19年の県民投票に続き4度目となる。政府は「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返すだけでなく、結果を真摯(しんし)に受け止め、強硬姿勢を改める必要がある。
ただ公約の実現は容易ではない。政府は移設方針を堅持し、工事を進める構えで、県と国との法廷闘争が続いている。埋め立て現場で見つかった軟弱地盤の存在で工事の先行きは見通せず、「普天間の危険を早期に除去する」という移設本来の目的も揺らいでいる。世論を背景に、国と玉城氏の双方が事態を打開する具体策を探らねばならない。
知事選では、新型コロナウイルス禍で痛手を受けた経済の再生も争点となった。世論調査でも、関心ある政策は「経済・観光・雇用」が最も多かった。子どもの貧困率が高い課題も指摘されている。地場産業を育て、観光業に偏った経済をどう自立させていくのか。玉城県政の2期目はその真価が問われる。
看過できないのは、自公政権が沖縄振興費を絡めて佐喜真氏を支援した対応だ。知事選の告示直前に内閣府が示した23年度の振興費の概算要求は2798億円で、10年ぶりに3千億円を割った22年度予算をさらに下回る。基地反対か経済振興かの選択を迫られてきた県民が、その中でも玉城氏を支持した意味は大きい。
一方で、移設反対で共闘する「オール沖縄」の退潮も指摘されている。翁長雄志(おながたけし)前知事の支援基盤で、玉城氏が引き継いだ。本土復帰50年の今年、知事選と同日に投開票された宜野湾市長選を含む5市長選で支える候補が敗れており、参院選と知事選の勝利で踏みとどまった形だ。
多くの課題に直面する複雑な県民感情がうかがえるが、知事選の結果は「基地のない平和の島」の実現を願う思いにはぶれがないことを全国に示した。岸田文雄首相は、その民意を尊重し、玉城氏が求める対話のテーブルに着くべきだ。
