アフリカ開発会議(TICAD)がこのほど、チュニジアの首都チュニスで開かれた。日本が主導して開発や支援を議論する国際会議で、今回が8回目となる。
岸田文雄首相も出席し、アフリカ各国の要人らと会談する予定だったが、直前に新型コロナウイルスに感染し、日本からのオンライン参加となった。代わりに林芳正外相が現地に向かい、対話に努めた。
国際会議は政治指導者の外交の舞台でもある。新型コロナの感染は仕方のないことだが、首相との直接対話の機会がなくなったからか、アフリカの首脳級出席は20カ国にとどまった。参加48カ国の4割で、3年前の前回会議から半減した。
アフリカ諸国との関係を深め、信頼を得るためには、目に見える形で支援や協力を進める必要がある。
TICADは国連や世界銀行、アフリカ連合委員会などとの共催で1993年に始まった。3~5年ごとに主に日本で開かれ、アフリカでの開催は今回が2回目だ。
アフリカの人口は約13億人で、世界人口の2割に迫る。今後も増え続ける見通しで、経済活性化や市場拡大も予想されている。
一方で新型コロナ感染はアフリカでも拡大し、混乱を広げた。さらにロシアによるウクライナ侵攻の影響で穀物価格が高騰し、食糧不足に直面している国や地域もある。
今回の会議では、食料などの直接援助に加え、各国の努力を後押しする自立支援の在り方が問われた。鍵を握るのは、農業や保健・医療、教育分野などでの投資と、アフリカの環境に適合した持続可能な開発を実現する取り組みだ。
首相はアフリカを「共に成長するパートナー」と述べ、今後3年間で総額300億ドル(約4兆1千億円)規模の資金投入を表明した。具体策として気候変動に対応する脱炭素対策を挙げ、20万人の農業人材養成、30万人の保健、教育人材養成などにも言及した。
さらに食料生産強化や感染症対策も喫緊の課題とした。いずれも重要なテーマである。神戸市は独自でウガンダとの若者交流や起業支援を続けており、自治体や企業、民間団体とも協力して進めてほしい。
気になるのは、2013年に約1兆6600億円だった日本の対アフリカ投資が、この10年ほどで半分以下に減少していることだ。巨額の融資で借金漬けにして支配を強める中国の「債務のわな」が問題視される中、支援の「量より質」を掲げた日本の本気度が問われている。
経済の成長や利益だけでなく、アフリカの人々が未来に希望を持てるよう、一緒に知恵を絞るべきだ。
