社説

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 東京五輪・パラリンピックの汚職事件がさらに広がった。東京地検特捜部は、大会スポンサーの代理店業務を担った広告大手ADKホールディングス(HD)と大会マスコットのぬいぐるみを販売したサン・アローから賄賂を受け取ったとして、大会組織委員会の元理事高橋治之容疑者を受託収賄容疑で再逮捕した。

 ADKHDの社長植野伸一容疑者ら3人も贈賄容疑で逮捕した。植野容疑者は社長を辞任した。

 高橋容疑者の逮捕は4回目だ。資金の流れは紳士服大手AOKIホールディングス、出版大手KADOKAWA、広告会社大広に続き、計5ルートとなった。五輪を巡る利権の闇はどこまで深いのか。

 容疑が事実であれば賄賂の総額は約1億9600万円に上る。大会を運営する公的な立場を悪用した由々しき行為であり、許し難い。

 今回の逮捕容疑はADKHDから約4700万円の賄賂を受領した疑いなどである。スポンサー企業の募集は高橋容疑者が専務だった広告最大手の電通が一手に握り、ADKHDなどは下請けのような仕事を容疑者に望んだという。業界の体質が抱える問題も検証する必要がある。

 資金の流れで驚かされるのは、2社からの賄賂計5400万円のほぼ半分が、高橋容疑者の知人が代表を務めた休眠状態のコンサルタント会社を受け皿にした点だ。KADOKAWAルートなどでも電通時代の後輩のコンサル会社が受け皿だった。こうした「隠れみの」を巧妙に使った手法にはあきれるほかない。

 この知人は容疑者の慶応高時代の後輩で、大会組織委副会長も務めた竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)前会長とも同学年で交流があったという。竹田氏は組織委会長だった森喜朗元首相とともに、人事に影響力があったとされる。

 特捜部は2人からも任意で事情聴取している。高橋容疑者の大会組織委理事就任に不審な点がなかったかも明らかにしてもらいたい。

 事件から見えるのは、商業化が行き過ぎた五輪の姿である。コロナ下での強行に加え、汚職の温床を見過ごしていなかったか。政府や東京都などの責任にも目を向けるべきだ。

 スポーツ庁の室伏広治長官は事件に関して「決して許されることではない。再発防止も含めて取り組む」と述べた。同庁やJOCなど5者による10月の円卓会議では、今後の大規模大会開催に向け、組織の在り方などを検討する決議をまとめた。

 現在、札幌市が2030年冬季五輪の招致活動を進めている。しかし事件の全容解明と運営組織の抜本的な改革がなされない限り、開催に対する国民の理解は到底得られまい。

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