社説

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 北朝鮮による連日の弾道ミサイル発射は常軌を逸している。近隣諸国の危険や不安を顧みない振る舞いは直ちにやめるべきだ。

 今月2日に短距離弾道ミサイルなど20発以上を日本海に発射した。うち1発は韓国が軍事境界線と位置付ける北方限界線(NLL)を飛び越えて落下し、韓国軍もこれにミサイル3発で対抗した。

 両国がNLLを越えてミサイルを撃ち合うのは初めてだ。軍事衝突が危ぶまれる事態である。

 北朝鮮は翌3日にも大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む4発を発射した。その際、日本政府はICBMが日本列島上空を通過するとみて全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令し、宮城、山形、新潟の各県で住民の避難を呼びかけ、鉄道や航空便などの交通が混乱した。

 発射されたICBMは、米本土を射程に収めるとされる新型の「火星17」とみられる。ただ、日本海上空でレーダーから消失し、飛行に失敗した可能性が指摘されている。

 米軍は最新鋭戦闘機を動員した韓国軍との合同訓練を実施していた。ミサイルの連続発射はそれへの反発と警告の意味があるとみられる。

 これに対して韓国は米軍との合同訓練の期間延長を決めた。岸田文雄首相も、日米韓の首脳会談で連携を強化する方針を打ち出した。

 懸念されるのは、一触即発の危機が今後いっそう高まることである。

 北朝鮮が新たな核実験に踏み切るとの観測もある。核・ミサイル開発は重大な脅威となるが、際限のない軍拡競争に陥ってはかえって地域の平和と安定が揺らぐだろう。北朝鮮の挑発に乗ることなく、動きと意図を分析する冷静さが必要だ。

 日本政府は、今回のICBM発射を受け、Jアラートで宮城などの住民に避難を呼びかけ、「太平洋へ通過」との見通しを示した。しかし実際はレーダーから消失し、情報を訂正したのは約1時間後だった。

 10月4日のミサイル発射でも、避難の必要がなかった東京都の島しょ部に警告を出している。相次ぐ誤発信が国民の信頼を損なわないよう、原因と経緯を徹底検証すべきだ。

 そもそも、高速で飛来するミサイルは、アラート発令の時点で通過、落下している可能性がある。「何のためのアラートか」と疑問の声が聞かれるのも無理はない。

 政府は送信迅速化の検討を始めたが、自治体や国民は予期せぬミサイルの飛来にどう備えればいいのか。インフラ施設などの破壊が懸念されるなら、具体的な被害想定を示し対策を練るのが筋だろう。危機への対応を国民に促すなら、もっと中身のある議論をしなければならない。

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