社説

  • 印刷

 国連の気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が、エジプトで始まった。18日までの日程で国際的な地球温暖化対策について話し合い、温室効果ガス削減を加速させる作業計画の策定を目指す。

 開幕に際し、議長国のエジプトは「将来の世代は、今の世代より深刻な結果に直面する」と述べ、対策強化を訴えた。また途上国の温暖化被害を巡る議題「損害と被害」を最優先課題に位置付けた。各国が協調して議論を前に進め、会議を実のあるものにしなければならない。

 会議に合わせ、世界気象機関は、今年までの8年が「世界の平均気温が観測開始以来、最も高くなる」との見通しを公表した。温暖化により各地の人々が熱波や豪雨、干ばつなどの異常気象に直面し、水害や飢餓に苦しむ。地球環境の危機的な現状を私たちも改めて認識したい。

 2020年以降の国際目標を定めた「パリ協定」は、産業革命前からの気温の上昇幅をできれば1・5度未満に抑えるとした。昨年のCOP26では「1・5度に抑える努力を追求する」と合意し、一歩進めた。

 ところが気候変動枠組み条約事務局の新しい予測で、各国が確約した30年までの温室効果ガス削減目標を達成したとしても、2・5度上昇することが分かった。温室ガス排出量の75%は、日本などの先進国と新興国を加えた20カ国・地域(G20)が占める。対策の見直しは急務だ。

 会議では、冒頭から先進国と途上国の対立が目立った。洪水で国土の3分の1が水没したパキスタンなどが損害と被害への支援を訴えたのに対し、先進国は慎重な姿勢だ。交渉は難航しているが、両者の分断を避ける知恵と工夫が求められる。

 温暖化の抑制に水を差しているのが、ロシアのウクライナ侵攻だ。天然ガスの供給が滞り、欧州などで石炭火力発電へ回帰する動きが見られる。米国と中国の対立が対策に与える影響も懸念される。国家間の紛争などが地球の危機を増大させる事態はあってはならない。

 会議は対策強化への合意にたどり着けるかどうかが焦点になる。気候変動は人類全体に共通する脅威であり、各国が結束して実効性のある具体的な目標を定めてもらいたい。

 日本の責任も問われる。バイデン米大統領ら先進各国のリーダーが会議に参加表明する中、岸田文雄首相は欠席する。後ろ向きとの批判は免れまい。政府は30年度に13年度比46%削減、50年に排出実質ゼロの目標を掲げているものの、石炭火力の廃止方針を示していない。世界から厳しい視線を浴びている状況を自覚し、早期に「脱炭素」を実現できるエネルギー政策を模索すべきだ。

社説の最新
 

天気(10月27日)

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 20℃
  • ---℃
  • 50%

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 23℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ