バイデン大統領(民主党)の任期前半の政権運営を評価する米中間選挙は、上下両院とも異例の接戦を繰り広げている。
野党共和党は事前の世論調査では圧勝が予想されていたが伸び悩み、与党民主党が追い上げる展開となった。とはいえ、下院は共和党が優勢だ。政権と議会の多数派が異なる「ねじれ」が生じれば、予算や法案が通りにくくなるなど、バイデン氏は難しいかじ取りを迫られる。
懸念されるのが、長期化するロシアのウクライナ侵攻への対応だ。共和党内には、ウクライナへの支援を縮小すべきだという議員もいる。それではロシアを利することになりかねず、国際協調を乱し、民主主義陣営の結束を揺るがす事態は避けなければならない。
最大の争点となったのは、約40年ぶりの記録的なインフレだった。バイデン政権はインフレ抑制法を成立させたが、物価は今なお高水準で、国民生活を直撃している。共和党は政権の失策と批判し、政策の転換を訴えて議席増を図った。ただ期待したような「レッドウエーブ(赤い波)」は広がっていない。
民主党は、経済以外に、連邦最高裁判決が憲法上の権利を否定した人工妊娠中絶や、銃規制も争点に掲げた。判決に危機感を抱く女性を中心に、これらの問題への関心が集まったことがうかがえる。
トランプ前大統領が推薦した共和党の候補には、前回大統領選の敗北を認めず、根拠なく大規模な不正を主張する「選挙否定派」が多い。
何よりも民主党が重視したのが「民主主義のあり方」だ。バイデン氏は、昨年のトランプ氏支持派による連邦議会議事堂襲撃事件に象徴される民主主義の危機を訴えた。支持率が低迷する中で大敗を免れたのは、多くの有権者が選挙結果を受け入れないこうした行為に警戒感を抱いたからではないか。
今回の選挙でも、米国社会の根深い分断と対立が露呈した。トランプ氏は2年後の次期大統領選に向け、近く立候補を表明するとの見方がある。内政、外交を問わず、難題解決へ求められるのは「融和」である。2年前に国民融和を掲げたバイデン氏の手腕が改めて試される。
