社説

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 岸田文雄首相がカンボジアの首都プノンペンで韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と会談した。日韓首脳の正式会談は約3年ぶりだ。最大の懸案である元徴用工の訴訟を巡る問題で、両者は早期解決を図る方針で一致した。

 日韓関係は「戦後最悪」と言われるほど冷え込んでいる。尹大統領は「未来志向の日韓関係を」と改善の姿勢を掲げており、岸田首相もこれに応じる考えを示してきた。

 具体的な道筋はまだ見えないが、今は事態打開に向けた外交当局間の協議が加速している状況だ。この動きを後戻りさせず、本気で未来志向の関係に結びつけねばならない。

 岸田首相は東南アジア諸国連合(ASEAN)の会議に出席するためプノンペンを訪問した。韓国側も出席し会談の環境が整った。

 このところ北朝鮮が異常なペースで弾道ミサイルなどの発射を続け、新たな核実験に踏み切るとの観測もある。緊張が高まる中、同盟国・米国だけでなく、韓国との連携も重要度を増している。

 この時期に首脳会談が実現した背景には、日米韓の結束を求める米バイデン政権の意向もあった。現地では3国の首脳会談や日米首脳会談なども行われ、北朝鮮の動向に関する情報共有などを確認し合った。

 今月初めに自民党の麻生太郎副総裁が韓国を訪れ、尹大統領と面談した。岸田首相の意向を踏まえて対話の地ならしを行ったとみられる。今回の会談で、岸田首相と尹大統領は首脳同士の意思疎通を継続していくことで合意した。これを機にトップ同士で対話を深めてほしい。

 ただ、関係改善には元徴用工問題を決着させる必要がある。植民地支配にさかのぼる根深い問題だが、1965年の日韓請求権協定で「解決済み」というのが日本の立場だ。とはいえ韓国内の国民感情が絡むだけに、「解決済み」と主張するだけでは出口は見いだせない。

 韓国では、最高裁が日本企業に補償を命じた判決が確定している。差し押さえられた日本企業の資産が売却される事態になれば、日本国内の対韓世論が厳しくなり、今以上に関係はこじれるだろう。

 日韓政府は、韓国の財団に賠償金を肩代わりさせるなどの案を検討しており、日本側は早ければ年内の決着を目指す構えだ。両国の本気度が問われる局面にさしかかってきた。日本は韓国の取り組みを支持し、ともに扉を開く姿勢を示したい。

 民間の交流は活発で、経済関係も深く、日本には韓流ドラマなどのファンも多い。この機会に歴史問題の大きな「とげ」を抜けば、新しい時代が開けると期待したい。今度こそ最大限の努力をすべきである。

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