社説

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 エジプトで開催されていた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が、地球温暖化で発展途上国に生じた「損失と被害」を回復する支援基金の設立で合意し、閉幕した。支援は太平洋などの小島しょ国やアフリカ諸国などが求めてきた懸案であり、画期的な進展だ。

 損失と被害は、気候変動に伴う大雨や高温、海面上昇などによる悪影響のことで、損失は人命など取り戻せないもの、被害は家屋損壊など修復可能なものを指す。被害額は2050年時点で年1兆ドル(約140兆円)との試算もある。議長国のエジプトが主導し、今回の会議で初めて正式な議題となった。

 支援を訴える途上国と負担を避けたい先進国が対立する場面もあった中で、基金創設が決定したのは会議の大きな成果だと言える。小島しょ国のグループは「30年がかりの目標が達成された」と歓迎した。

 ただ、基金の運営細則など、制度の具体的な設計は先送りされた。途上国への支援が確実にできる仕組みになるよう、各国が協調して議論を深めなければならない。

 一方、もう一つの焦点だった温室効果ガス対策では、目標に向け「さらに努力する」との決意を表明するにとどまった。化石燃料の段階的廃止など実効性のある方針を出せず、会議全体では課題を残した。

 パリ協定では気温上昇をできれば1・5度未満に抑えるとし、昨年のCOP26では「1・5度に抑える努力を追求する」と合意した。しかし現状の二酸化炭素排出が続けば、1・5度に収める目標はあと9年で不可能になるとの予測がある。対策が遅れれば遅れるほど、温暖化の問題が深刻化するのは必至だ。

 会議では、再生可能エネルギーの導入を加速すべきだとの認識を共有した。50年に温室ガス排出を実質ゼロにするためには、30年までに年4兆ドルの投資が必要との具体的な数字も示された。排出の多い先進国や新興国の投資は責務と言える。

 残念だったのは、日本が存在感を発揮できなかった点だ。バイデン米大統領やスナク英首相ら多くの首脳が出席する中で、岸田文雄首相は欠席した。西村明宏環境相も新たな基金については言及しないまま、交渉の終盤で帰国した。日本が世界各国から、温暖化対策に後ろ向きと捉えられても仕方がない。

 来年、日本で開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも、気候変動問題が重要なテーマになるとみられる。COP27で西村氏は「主要経済国にさらなる温室効果ガス排出削減を呼びかける」と述べた。重みのある提言にするには、日本が率先して脱炭素を進めるしかない。

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