社説

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 同性婚を認めない民法などの諸規定は憲法違反として、同性カップルら8人が国に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は、同性愛者がパートナーと家族になるための法制度が存在しないことを「憲法違反の状態」とする判決を言い渡した。

 判決は、同性婚ができない現状を「同性愛者の人格的生存に対する重大な脅威、障害だ。個人の尊厳に照らして合理的な理由はない」とし、国会での立法措置を促した。

 昨年3月に札幌地裁が「違憲」とした判決に続く司法判断であり、婚姻の平等に向けて一歩進んだと言える。同性カップルが差別されず、家族として法的利益を受けられる社会の在り方を考える契機にしたい。

 同種訴訟は全国五つの地裁に提訴され、今回の東京地裁判決は3件目だ。今年6月の大阪地裁と同様、結論としては「合憲」として賠償請求を棄却した。違憲、合憲の判断は分かれたものの、3判決とも結婚を巡る現行制度を疑問視した点では共通する。憲法の理念にそぐわないと司法が示唆した意味は大きい。

 各訴訟では、法の下の平等を定めた憲法14条と婚姻関係の法律を規定する憲法24条に、現状の諸規定が違反するかが争点になった。札幌地裁は14条に関して「違反」とし、東京地裁は24条について「違反の状態」とした。それぞれ別の角度から問題点を指摘したと言えよう。

 また3判決は立法措置の必要性を強調したことでも一致し、東京地裁は「立法府で十分に議論、検討がされるべきであり、立法裁量にゆだねられている」とした。ところがこの判決に対し、自民党幹部は「最高裁を含めた今後の司法判断を見守りたい」と述べるにとどめた。

 違憲状態の解消は急務であり、見守る猶予はない。政府と国会は司法判断を重く受け止め、これまで性的少数者の権利を巡る議論を停滞させてきた責任を痛感すべきだ。できるだけ早く同性カップルに関する法整備の検討を始めねばならない。

 海外では同性婚の法制化が進み、欧州では既に一般化している。先進7カ国(G7)の中で、同性婚や同性カップルの法的な保護をしていないのは日本だけである。

 一方で地方自治体では、性的少数者のカップルを婚姻相当の関係と認める「パートナーシップ制度」の導入が進む。兵庫県内でも2016年に取り入れた宝塚市をはじめ尼崎、明石、西宮、姫路など11市町が導入し、神戸市も検討している。

 国内外を見渡せば国の対応の遅れが際立つ。判決は、婚姻や家族についての国民意識は変化するとの認識も示した。国会は旧習に縛られず社会の現状を直視してもらいたい。

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