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 「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの社長だった大東(おおひがし)隆行さん=当時(72)=が2013年に射殺された事件で、京都地検は特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)系組幹部の田中幸雄容疑者を殺人などの罪で起訴した。ただ、直接的な物証はなく、田中被告も黙秘しているという。公判に備え、予断を許さず証拠を積み重ねてほしい。

 被告と大東さんをつなぐ接点は確認されておらず、動機は未解明のままだ。京都府警と福岡県警の合同捜査本部は、被告が実行役の組織的犯行とみており、継続した捜査による全容解明が欠かせない。

 起訴状などによると田中被告は氏名不詳の人物らと共謀し、大東さんの殺害を計画した。13年12月19日早朝、京都市山科区の同社本社前で大東さんの腹や胸を拳銃で4発撃って失血死させたとされる。

 逮捕までに約9年を要した。現場に残されたたばこの吸い殻から被告のDNA型が検出されたほか、事件前日に大東さんの自宅付近の防犯カメラによく似た男が写り、被告とみて矛盾しないとの鑑定結果も出た。

 逃走に使われたとされる盗難バイクは、被告が借りた軽乗用車に乗っていた人物が事件の2カ月前に京都市内で盗んだものだった。その後、2台が並走する様子が防犯カメラで確認されている。ただ、いずれも状況証拠にとどまっている。

 被告は、手口が似通う事件を過去に起こしている。福岡市内で08年、大手ゼネコン「大林組」の車を銃撃した銃刀法違反などの罪で懲役10年の判決が確定した。事前に下見をしたとみられる点や、逃走に盗難バイクを使った点が共通する。

 福岡の事件では、同じ工藤会系の組員との共謀が認定されている。工藤会は、用心棒代の要求を拒絶した企業や暴力団排除に積極的な一般市民を標的にした襲撃事件を繰り返し、全国で唯一の特定危険指定暴力団に指定されている。暴力団の組織的な関与の有無も焦点になる。

 事件の全容を解く鍵として捜査本部が注目するのは、王将を巡る不適切取引だ。事件の背景を調べた同社の第三者委員会が、創業者(故人)と次男らが特定の企業グループと約260億円もの不適切な取引を繰り返し、約170億円が未回収になっていると発表した。反社会勢力との関係は確認されなかったという。

 大東さんは企業グループとの関係清算を進めていた。事件前に「殺されるかもしれない」と話していたという。海外にいるとされる次男の任意聴取も急ぐ必要がある。会社を取り巻く「闇」が事件に絡んでいないか、捜査本部は粘り強い捜査で明らかにしてもらいたい。

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