ロシアによる侵攻が続くウクライナは、戦況が泥沼化する中で本格的な冬を迎えた。最低気温は氷点下となり、大地は雪に覆われている。
戦火にさらされる国民は、厳しい冬の到来とともに、大規模な停電や断水など生活を脅かす危機に直面している。暖房が十分に使えず、命と健康に関わる深刻な状況だ。
原因はロシアによる連日のミサイル攻撃である。電力施設などのインフラが集中的に破壊され、生活を支えるエネルギー網が寸断された。医療機関も機能の維持が困難な事態に陥っているという。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、寒さで国民を苦しめようとする「エネルギーテロ」とロシアを批判した。国民生活を丸ごと人質に取るような軍事行動は人道に反し、許されない。プーチン大統領は攻撃を直ちに中止すべきだ。
ロシアは2月の侵攻開始以降、9カ月で1万6千発超のミサイルを撃ち込んだとされる。軍事施設を狙ったのは約500発で、ほとんどが民間施設を標的にしている。ロシアは「軍事施設のみが攻撃対象」と主張する。だが攻撃を受けたエネルギー施設は全土に広がり、意図的な破壊行為とみるしかない。
ロシア軍はウクライナ軍の反転攻勢で劣勢に立たされており、社会基盤の破壊でウクライナ国民の戦意喪失を図ったとの見方がある。だが、そもそも民間施設への攻撃は国際法に明白に違反する。事実であれば断じて容認できない。
こうした事態を受けて、欧州連合(EU)欧州議会は、ロシアを「テロ支援国家」とする決議を行った。「インフラ破壊はテロ行為に相当する」という内容だ。
大規模停電はウクライナの隣国モルドバにも波及し、混乱は国境を越えて拡大している。同国は「モルドバを暗闇と寒さに閉じ込めた」とロシアを非難した。多くの国々が批判の声を強め、戦闘の終結を求める国際圧力を強める必要がある。
一方でウクライナへの支援も広がっている。日本政府は、越冬支援として約257万ドル(約3億5千万円)の緊急無償資金協力を決めた。国連難民高等弁務官事務所を通じて、発電機や太陽光で充電する方式のランタンを供与する方針だ。
民間団体の「国境なき医師団」は日本製の使い捨てカイロの提供を検討している。現地の避難所で日本人医師が手持ちを配布し、暖を求める人たちに喜ばれたという。
寒さはこれからより厳しくなる。政府は現地で活動する非政府組織(NGO)などと協力し、きめ細かな支援に尽力してほしい。私たちが兵庫からできることもあるはずだ。
