臨時国会がきょう、閉会する。物価高への対応を柱とする総合経済対策を盛り込んだ約29兆円に上る補正予算が成立し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を巡る被害者救済法も成立の見通しだ。一方で、3閣僚が失言や政治資金問題などで辞任に追い込まれ、岸田文雄首相の任命責任が厳しく問われた。
総合経済対策は、電気・都市ガス料金の負担軽減策や、ガソリン価格を抑える補助金の継続などの支援措置が中心だ。生活困窮層への援助は必要だが、富裕層を含めた一律の支援は賢明とは言い難い。物価高は長期化が懸念され、企業が継続的に賃金を引き上げる必要があるが、その支援策は目新しさを欠いた。
歳入の8割を国債(借金)に頼る妥当性に関する議論は深まらなかった。コロナ禍に対応した巨額の財政出動を繰り返してきた結果、国債発行残高は1千兆円を突破する見込みだ。補正予算の編成は財政法で「特に緊要となった経費の支出」などに限られる。次世代へのつけ回しであることを忘れてはならず、政策効果の検証が欠かせない。
旧統一教会問題の被害者救済法を巡っては、深刻な被害の要因とされるマインドコントロール(洗脳)下での寄付の規制が焦点となった。禁止を求める野党に対し、政府、与党は寄付の勧誘時に当たっての配慮義務規定に関して「十分に配慮」とより強い表現に変え、怠った場合は勧告、公表の対象とするとした。
世論の強い反発も考慮し、野党に歩み寄った対応は一定評価できる。しかし、寄付を取り消す対象を明示する「禁止行為」とは隔たりが大きく、被害者側には規制の実効性を疑問視する声が根強い。与野党は運用を検証し、被害実態を踏まえた見直しを重ねていかねばならない。
国会議員の調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の透明化はまたもや先送りされた。
立憲民主、日本維新の会、国民民主の3党は、旧文通費の使途公開や未使用分の返還を義務付ける歳費法などの改正案を衆院に共同で提出した。だが自民党内の消極論もあり、合意に至らなかった。物価高で国民生活が厳しさを増す中、議員特権の放置は許されない。与野党は協議を継続し、来年1月召集の通常国会までに是正を決断してもらいたい。
防衛費の増額や敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有、原発の新増設など、岸田政権は国会での議論や合意を経ることなく、なし崩し的に方針転換を図る手法が目立つ。もはや「聞く力」の看板もむなしいが、首相は原点に立ち戻り、国民の批判や不安の声に真摯(しんし)に向き合い、政治への信頼を取り戻すべきである。
