社説

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 政府が「全世代型社会保障」の報告書を決定した。子どもから高齢者までが安心して暮らせる制度を目指す改革で、岸田文雄首相が本部長を務める全世代型社会保障構築本部傘下の有識者会議で議論していた。

 子育て支援として、1人当たり42万円の出産育児一時金を、2023年度から50万円に増やす施策などを柱にしている。児童手当の拡充、時短勤務者への給付を23年中に具体化させることなども盛り込んだ。

 給付は高齢者、負担は現役世代という従来型の社会保障を転換するのが狙いだ。全世代で負担を分かち合うという考え方は理解できる。

 しかし報告書は、制度を支える財源について「恒久的な確保を検討する必要がある」と指摘するにとどめ、今年夏に策定する経済財政運営指針「骨太方針」で示すとしている。待ったなしの懸案を後回しにしたと言うほかない。

 財源の一部は、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度から拠出するという。高齢者の負担増の程度を含め、議論を急ぐ必要がある。

 報告書は介護保険料引き上げの結論も先送りした。昨年、1割負担の人の一部を2割にする案や高所得者の保険料を引き上げる案を検討したが、議論が遅れて越年した。

 すでに後期高齢者医療の窓口負担は加入者の約2割で1割から2割へ引き上げられ、医療保険料の増額も決まっている。負担増のオンパレードになり、今年の統一地方選に悪影響を及ぼすのを避けたとの政府関係者の見方もある。そうだとすればあまりにも無責任だ。

 社会保障の改革に対し、多くの高齢者は、増税が先行し、いずれは給付も減らされるのではという警戒感を抱く。将来への不安を少しでも和らげるには、政府が負担と給付を一体的に検討し、国民に丁寧な説明を尽くす努力が求められる。

 見過ごせないのは、暮らし関連の予算よりも防衛費を優先している政府の姿勢だ。岸田首相は社会保障の財源には踏み込まない一方で、防衛関連予算を国内総生産(GDP)比2%に広げ、27年度までに43兆円を投入する方針を決めた。

 防衛財源の一つとして、国立病院機構など厚生労働省所管の独立行政法人に、新型コロナウイルス対策で積み上がった剰余金を拠出するという。コロナ禍で脆弱(ぜいじゃく)さが露呈した医療の体制強化などに使うべきものであり、理解に苦しむ。

 税収を増やし、社会保障を安定させるには、少子化の解消が欠かせない。22年の出生数は80万人を割り込み、過去最低を更新する見通しだ。政府は最重要課題として対策のさらなる強化に取り組んでもらいたい。

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