社説

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 世界第2位の経済大国・中国が人口減時代に突入した。懸念されるのは、経済の縮小や成長の鈍化が内外に及ぼす影響である。

 中国国家統計局によると、台湾や香港、マカオを除いた2022年末の総人口が前年末より85万人減少し、14億1175万人になった。減少は実に61年ぶりで、出生数も6年連続で前年割れしており、国全体の構造的な問題と言える。

 今後、減少ペースは加速し、来世紀には総人口が半減すると予測されている。事態は深刻だ。世界第2位の経済大国の活力が低下すれば、日本も大きな波をかぶるだろう。

 その日本も中国に先行して少子高齢化を迎えており、岸田文雄首相は先ごろ「歴史的な難局」との認識を示した。中国の対応を注視しつつ、解決の道を探らねばならない。

 中国の人口はずっと世界最多だったが、その歴史が転換した。代わって世界一になったとみられるのが、推計人口14億1200万人のインドである。インドは引き続き人口増が続き、経済成長率も中国を上回るペースで伸びるとの見方が有力だ。

 かつて2桁成長を誇った中国経済は近年、1桁代に低迷している。22年の実質経済成長率は3・0%で、政府目標の5・5%前後を下回った。今年の成長率も4%台半ばにとどまると予想されている。

 中国は「世界の工場」として躍進し、海外からの投資を呼び込むなど、世界経済をけん引してきた。人口増による労働力の増加がその原動力だった。人口減と低成長が続けば利点を一気に失うことになる。中国共産党の習近平指導部は抜本的な構造改革に迫られている。

 人口爆発を警戒した中国は、長く「一人っ子政策」を続けてきた。その結果、少子高齢化が加速したため7年前に同政策をやめ、教育費の負担軽減や出産への補助金など子育て支援策にかじを切ったが、人口減は一向に止まらない。

 10億人を超す大規模市場の優位性は当面揺るがないとの見方もある。ただ、一人っ子政策時代に育った世代は出会いや結婚の機会に乏しく、将来への不安を抱える人が少なくないようだ。一方で個人の自由を重視する価値観を共有し、政府が号令をかけてもその通りにはならない。

 「ゼロコロナ政策」の見直し後に感染症が急拡大し、政策の混乱も影を落としている。

 指導部は「強国」実現を掲げている。だが、この流れを反転させるには、不十分とされる社会保障の充実で生活不安を解消するとともに、自由を尊重する開放的な社会にする必要がある。強権政治で出口を見いだすのは、至難の業だろう。

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