公立小中学校の通常学級に在籍する児童生徒の8・8%に、読み書きや計算、対人関係に困難を抱える発達障害の可能性があることが、文部科学省の調査で分かった。10年前の調査より約2ポイント増えた。35人学級であれば3人ほどが該当する。
抽出した小中学生約5万4千人について、「計算にとても時間がかかる」「話し合いが難しい」などの項目が該当するかどうかを担任が判断した。割合が増加した理由を、文科省は「発達障害に対する教員の理解が深まったため」と説明する。
子どもの特性に目を配り、気付きが増えたのであれば、前進と言える。しかし、せっかくの気付きがサポートに結びついていないのが現状だ。該当する児童生徒のうち約7割は、校内で「特別な教育支援が必要」との判断を受けていなかった。
学びから取り残され、自信を失ったり、孤立感を深めたりしている子どもは少なくないと思われる。本人や保護者の意向を反映しながら、一人一人に合わせた柔軟な支援ができるよう、国は環境整備に力を入れねばならない。
発達障害は、生まれつきの脳機能障害が原因とされる。学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、特定の事柄へのこだわりが強い高機能自閉症などを含む。
文科省は障害の有無にかかわらず共に学ぶ「インクルーシブ教育」を進める上で、「通級指導」を重視している。通常学級で授業を受けながら、必要に応じて対人関係の築き方などを別室で学ぶやり方だ。兵庫県内で通級指導を受ける小中学生は2022年度に4520人で、10年間で約3倍に増えた。希望者の増加に対応が追いつかない状況という。
専門の知識や指導技術を持つ教員の養成が急がれる。文科省は昨年、新規採用の教員が10年以内に特別支援学級の担任などを2年以上経験するよう求める通知を出した。中堅やベテランの研修拡充はもちろん、校長などの管理職が専門性を高めることが欠かせない。医療や福祉といった外部の専門家と連携し、組織の対応力を磨いてほしい。
神戸市教育委員会は昨年、就学前の5歳児から高校生までの教育に配慮が必要な子どもに関する相談窓口を一つにした「特別支援教育相談センター」を設けた。保護者からの相談に応じるほか、学校への専門家派遣などで教育現場を支援する。こうしたサポート体制が広がることを期待したい。
子どもの抱える課題は多様化しており、それぞれの個性を尊重しながら成長を促すには、教員の手厚い配置が求められる。次世代のための思い切った予算配分が必要だ。
