社説

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 関東や西日本などでの広域強盗事件に絡み、フィリピンの入管施設に収容されている日本人の男4人の強制送還に向けた調整が両国間で進んでいる。「ルフィ」「キム」などと名乗る強盗事件の指示役が含まれるとみられ、特殊詐欺事件に関わる窃盗容疑で警視庁が逮捕状を取った。警察当局は事件の全容解明を急ぎ、社会不安を取り除かねばならない。

 「ルフィ」の一人とされる渡辺優樹容疑者(38)は、マニラの裁判所で女性らへの暴力行為の罪に問われている。他の容疑者も同様の罪で訴追されたが取り消されており、いずれも送還を免れるため事件をでっち上げた可能性がある。フィリピンは日本と犯罪人引渡条約を結んでいないが、事件の重大性を鑑み、速やかに身柄を引き渡してもらいたい。

 警察庁によると、一連の事件は昨年以降、窃盗なども含め、関東や中国地方を中心に14都府県で少なくとも20件起きた。宅配業者を装って押し入ったり、窓ガラスを割って侵入したりするなど手荒さが目立ち、今年1月には東京都狛江市で90歳女性が両手を縛られ、殺害された。

 一部の事件で実行役とみられる10~30代の三十数人が逮捕されたが、首謀者である指示役の特定が捜査の焦点になっていた。渡辺容疑者らは約2300件、計約35億円に上る特殊詐欺事件を主導した疑いもあり、併せて全容の解明が待たれる。

 一連の事件で、実行役の大半が交流サイト(SNS)での「闇バイト」の募集に応じ、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」で指示を受けていたとされる。「高額報酬」につられて軽い気持ちで誘いに乗り、抜け出せなくなった実態が浮かぶ。凶悪犯罪に加担するという意識が希薄な若者らには驚くほかない。

 警察庁は3月から、強盗や殺人の依頼などをうかがわせるインターネット上の違法・有害情報の投稿について、サイト管理者らに削除を依頼する方針だ。強制力はないが、闇バイトの根絶に向け、通信事業者ら民間企業の協力も欠かせない。

 面識のない者同士がSNSを介してグループを形成し、犯行に及ぶ事態は全国どこでも起き得るだけに看過できない。ネット情報とどう向き合うかについても、社会全体で考えていく必要がある。

 兵庫県は2023年度、地域の防犯訓練や研修会にアドバイザーを派遣する方針を固めた。県が専門家をリストアップし、地域ぐるみで高齢者らの防犯対策を後押しする。

 玄関の二重施錠や安易に個人情報を出さないなど個人の取り組みも求められる。警察や行政は、犯罪の傾向や効果的な対策など防犯につながる情報発信にも力を入れるべきだ。

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