社説

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 東京五輪・パラリンピックの事業を巡る入札談合事件で、大会組織委員会の大会運営局元次長森泰夫容疑者、広告最大手電通の元幹部逸見晃治容疑者ら計4人が、独禁法違反(不当な取引制限)の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。

 組織委元理事の高橋治之被告が受託収賄罪で4回起訴された汚職事件に続き、談合事件でもついに逮捕者が出る事態となった。広告会社の談合が摘発されるのは異例だ。

 東日本大震災からの復興を後押しし、有形無形のレガシー(遺産)を残すとの意義を掲げた東京大会は、不正と疑惑にまみれた負の遺産に失墜したと言うほかない。世界最大のスポーツの祭典の歴史に残した汚点はあまりに大きい。組織委を設立した東京都、日本オリンピック委員会(JOC)の責任も極めて重い。

 4人は2018年、共謀し、テスト大会の計画立案業務や本大会運営などの契約で受注予定企業を決めた疑いが持たれている。受注規模は計約400億円という巨額だった。

 東京大会の開催経費は1兆4238億円で、そのうち55%が公費でまかなわれた。談合によりコストがかさんだ可能性もあり、容疑が事実なら国民を裏切る行為である。特捜部は談合の実態と背景を解明し、白日の下にさらしてもらいたい。

 関係者によれば、森容疑者は電通本体の窓口だった逸見容疑者らとともに、競技ごとに企業を割り振った一覧表を使い、受注調整を進めたという。計画立案業務は一般競争入札で26件実施され、電通など9社と一つの共同企業体が落札した。ほぼ半数が1社応札だった。森容疑者は応札を希望する企業に辞退を迫ることもあったとされる。組織委幹部としてかけてはならない圧力だ。

 森容疑者は容疑を認める一方で、逮捕される前に「大会を成功させるため(企業を当てはめ)受注調整をした」と供述したという。関係者の中には「談合は必要悪だった」との声もあるが、身内の論理に過ぎず国民の理解は到底得られない。

 看過できないのは大会と広告業界の関わりの深さだ。高橋被告も電通専務だった。一連の事件には博報堂やADKホールディングスなど広告他社も関与したとされる。広告業界は、五輪を公共性の高い平和の祭典ではなく、巨大な利権を生むイベントと見ていたのではないか。行きすぎた商業主義が不正の温床だったとすれば、見直しは急務である。

 今後開催される大規模なイベントで、同様の問題を繰り返すことは許されない。政府や都、JOCは、東京大会の運営や組織の在り方などの問題点について検証を尽くし、国民に説明しなければならない。

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