社説

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 大阪府出身で中学2年生の囲碁棋士仲邑菫(なかむらすみれ)三段が、第26期女流棋聖戦3番勝負の第3局で上野愛咲美(うえのあさみ)女流棋聖を破り、2勝1敗でタイトルを手にした。13歳11カ月という最年少での快挙だ。中学生のタイトル保持者も初めてとなる。

 これまでの最年少記録は藤沢里菜女流本因坊による15歳9カ月(2014年)で、これを2歳近くも更新した。男女混合棋戦での最年少も、井山裕太三冠の16歳4カ月(05年)だった。素晴らしい記録に心からの拍手を贈りたい。

 新女流棋聖となった仲邑三段は「タイトルを取るのは棋士としてたいへんなこと」「自信になりました」と話しながらも「まだ、あまり実感はない」と笑顔を見せた。だがその実力は、井山三冠が「将来的には七大タイトル戦などでもトップ争いが期待できる」と認めるほどだ。若手の躍進が、囲碁界の魅力をさらに向上させてくれると期待したい。

 プロ入りのとき、仲邑三段は「中学生のうちにタイトルを取りたい」と大きな目標を掲げ、昨年以来3度目のタイトル挑戦でその夢を実現させた。有言実行を果たしてみせる才能と努力、敗戦を糧に成長する精神力には驚くほかない。

 興味深いのは、記録更新の背景に人工知能(AI)の活用があるという点だ。近年、AIが急速に強くなり、囲碁の世界に大きな変化をもたらした。仲邑三段も最新の技術を取り入れて研さんを積み、目覚ましい進化を遂げている。

 将棋界では、藤井聡太五冠がAIを使った研究で新手を生み出していることで知られる。前人未到のタイトル100期を目指し、王将戦で藤井五冠と対戦している羽生善治九段も「(AIを)アイデアの幅を広げるために使っている」と話す。

 囲碁、将棋とも、AIを駆使する若手とそれに立ちはだかるベテランの対決が今後も楽しみだ。

 仲邑三段は19年、日本棋院の英才特別採用の第1号棋士として10歳0カ月でプロ入りした。これは当時の最年少記録だったが、関西棋院が新設した英才特別採用で昨年9月、藤田怜央(れお)初段が9歳4カ月に塗り替えた。藤田初段は今月、これも最年少となる9歳9カ月で公式戦の初勝利を挙げた。

 国際棋戦では近年、日本は中国、韓国の2強に差を開けられているだけに、新しい世代の台頭は心強い。韓国でも修業してきた新女流棋聖は今後について「自分の力を信じて、楽しんで世界戦でも打ちたい」と意気込みを語っている。

 国内の棋戦ではもちろん、近い将来、国際的な大舞台で活躍する姿を見せてくれるに違いない。

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