ベラルーシの病院での臓器移植を無許可であっせんしたとして、警視庁は、臓器移植法違反容疑でNPO法人「難病患者支援の会」(東京)の理事を逮捕し、法人としての同会を書類送検した。警視庁によると、無許可でのあっせん容疑を適用し、海外での移植を巡り立件するのは全国で初めてという。
逮捕された理事は、厚生労働相の許可を得ずに東京都内の40代男性の親族に海外での移植を勧め、渡航や移植の費用名目で現金3300万円を支払わせ、肝臓を移植する手術を受けさせた疑いが持たれている。男性は移植後に体調が悪化し、帰国して家族から生体肝移植を受けたが回復せずに死亡した。
理事は「海外で行われる移植は許可が要らないと思っていた」と容疑を一部否認しているという。警視庁は、同会がホームページで患者を募ったり、国内で親族に持ちかけたりしていることから、国内でのあっせんに当たると判断した。
違法なあっせんは、移植を待ち望む重病患者の切実な気持ちにつけ込んだ行為であり、到底許されない。
理事は相場の2倍に当たる高額の費用を患者側に要求したとされる。警視庁は、患者とみられる約150人分の名簿を押収している。仲介を始めた経緯や余罪などの捜査を尽くし、全容を解明してもらいたい。
海外移植はリスクが高いとされる。手術だけでなく、移植後の感染対策など高度で継続的な術後管理が不可欠だ。劣悪な環境で患者に移植を受けさせ、重大な体調不良を招いてはいないか。今回の摘発を機に渡航移植の実態把握を進め、悪質な仲介業者をなくすための法規制など抜本的な対策を講じるべきだ。
臓器移植法の不備を指摘する声もある。同法が禁じる無許可あっせんの対象は死体からの移植のみで、生体移植は含まれない。ベラルーシでは、親族間以外の移植は死体からの臓器提供に限ると厳しく決められていたため、立件できたとみられる。
同法は厚労相が許可した団体への立ち入り検査を規定している。無許可の団体にも国が関与できるよう見直す必要があるのではないか。
渡航してまで患者が移植を希望する背景には、国内の深刻な臓器提供者(ドナー)不足がある。日本臓器移植ネットワークによると、人口100万人当たりのドナー数は0・62人で、米国の41・88人、韓国の8・56人などと比べて極端に少ない。1年間に日本で移植を受けられる患者は希望者の2~3%にとどまる。
臓器移植に対応できる医療体制の整備など、希望する本人や家族の意思を確実に生かせる仕組みをさらに充実させていくことが欠かせない。








