社説

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 北朝鮮が弾道ミサイルを3発続けて日本海に向けて発射した。うち1発は、北海道渡島大島の西方約200キロに当たる日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。

 当時、付近の海域ではフェリーが航行し、青森県のイカ釣り船も操業中だった。被害は確認されていないが、事前の警告はなく、船舶や航空機に危険が及ぶ恐れがあった。

 北朝鮮は昨年11月にも、今回と同じEEZ内に弾道ミサイルを着弾させている。他国民の安全を顧みない暴挙に怒りがこみ上げる。

 米国と韓国は3月に大規模な合同軍事演習を計画しており、連続発射には威嚇の意図があるとみられる。しかし米韓両軍は戦略爆撃機などを投入した合同訓練で対抗し、航空自衛隊も米軍との共同訓練を行った。北朝鮮の意図とは逆に、さらなる包囲網の強化を招いた形である。

 ミサイル発射は国連安全保障理事会の禁止決議に違反する。安保理は公開会合の開催を決め、国際社会の批判は高まっている。これ以上の無謀な振る舞いはやめるべきだ。

 発射されたのは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発と短距離弾道ミサイル2発とみられている。EEZに落下した1発目はICBM「火星15」とされ、最高高度約5700キロで、約900キロ飛行した。軌道に基づいて計算すれば、米全土が射程に入るという。

 北朝鮮は、昨年発射を繰り返した「火星17」を含めて新型ICBM開発を優先課題に挙げる。液体燃料エンジン搭載型に加えて、発射の動きが探知されにくい固体燃料式の開発も急ぎ、超大国・米国に直接圧力をかけようとしている。

 今回、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹である金与正(ヨジョン)党副部長は「太平洋を射撃場として活用する」などと述べた。日本列島を越える弾道ミサイル発射に言及したとみられる。身勝手な言動と言うしかない。

 北朝鮮の弾道ミサイルは過去7回日本列島を通過している。政府は全国瞬時警報システム(Jアラート)で避難を呼びかけたが、必要がない地域に警告を出す混乱もみられ、対応の難しさを浮き彫りにした。

 一方、たび重なるミサイル発射は反撃能力(敵基地攻撃能力)保有と米国製巡航ミサイル「トマホーク」大量購入など、日本の防衛政策転換の理由とされた。だがそれが北朝鮮の変化などを促し、安全につながるのか、冷静に議論する必要がある。

 北朝鮮では食料事情が悪化し、餓死者が出ているという。国民の命と暮らしを犠牲にした軍事優先に正当性はない。対話に転じ、国際社会の支援を受け入れなければ、国内の困窮はこれからも続くだろう。

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