社説

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 国会欠席を続けるNHK党のガーシー(本名・東谷義和)議員に対し、参院は「議場での陳謝」を科す懲罰を与野党の賛成多数で可決した。欠席を理由とする懲罰は衆参両院を通じて前代未聞の事態だ。

 国会法は議員に対し、召集日に国会に集まるよう義務付けている。正当な理由なく7日以内に来ない場合、議長は「招状」を出して出席を求め、それにも応じなければ懲罰委員会に付すと定めている。

 陳謝は4段階ある懲罰のうち、除名、登院停止に次いで3番目に重い。懲罰委では即時除名を求める意見も出たが、有権者から選ばれた議員の身分を考慮して見送った。陳謝に応じなければ、議員の身分を失う除名も視野に再検討するという。

 ガーシー氏はアラブ首長国連邦(UAE)などに滞在し、昨年7月の参院選比例代表で初当選後、一度も登院していない。74年ぶりに議長が出した招状にも応じなかった。懲罰はやむを得ない判断と言える。

 ガーシー氏は今年1月、動画投稿サイトで著名人を中傷、脅迫したなどの疑いで警視庁から関係先の家宅捜索を受けた。帰国しない理由を「不当な拘束を受ける可能性がある」とし、批判に対し「悪名は無名に勝る。何も刻まず辞めていく議員よりは百倍ましか」などと交流サイト(SNS)で反論した。

 法案や政策を議論し、採決で意思を示す。それが国会議員の職責であることに疑問の余地はない。国民の負託を受けた議席の重みを自覚しない身勝手な主張と言うほかない。

 国会議員には会期中は逮捕されない特権がある。潔白を主張するなら帰国して自ら説明責任を果たすのが筋だ。国会へのリモート出席を実現したいなら賛同者を集め、法や規則を変えればいい。それができるのは唯一の立法機関、国会を構成する国会議員である。このままでは貴重な議席を無駄にすることになる。

 この間、月々の歳費と調査研究広報滞在費(旧文通費)、期末手当が支給されている。本来の職務を果たさず、議員特権と多額の税金を享受する姿に国民の理解は得られまい。

 N党側は「海外で活動すると公言して当選した」と弁明するが、国会出席の意思がない人物を擁立した党の責任も大きい。速やかな帰国と登院を指示し、混乱を収拾すべきだ。

 長期欠席議員への歳費支給は2019年参院選広島選挙区の大規模買収事件でも問題となり、停止できる法改正が検討されたが棚上げとなった。比例代表の議席を巡る「ご都合主義」は他の政党でも目につく。

 各党、議員はわが身を省みて、国民の負託に応える議員の職責と選挙制度の議論を深めてもらいたい。

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