社説

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 2024年春に卒業する大学生らを対象にした会社説明会がきのう解禁され、就職活動が本格化した。兵庫県内でも合同説明会が開かれ、大勢の学生が詰めかけた。

 新型コロナウイルス禍で落ち込んだ飲食や観光などの需要が回復したことや、慢性的な人手不足が相まって、企業の採用意欲は非常に高い。23年卒に続き、学生に有利な「売り手市場」となりそうだ。

 それだけに、優秀な学生を早く囲い込もうと採用活動を前倒しする動きが目立つ。今年2月1日現在で内定や内々定を得た学生は約20%に上り、前年同期より6・4ポイント増えたという民間の調査もある。

 周りと自分を比べ、焦る学生は多いに違いない。希望の業種を絞り切れておらず、不安を募らせる人もいるだろう。

 しかし、慌てる必要はない。大事なのは、自分の将来についてじっくりと考えることである。会社説明会や先輩への訪問などを通して、幅広い業界を見てほしい。思ってもみない発見があるかもしれない。

 仕事内容や給与水準に加え、やりがいやワークライフバランスを重視する学生は増えている。社員の勤続年数や、採用と管理職の女性割合など、多角的な観点から企業を研究することを薦めたい。どのような働き方をしたいのかを考えるきっかけにもなるはずだ。

 来春卒業予定の学生は、入学当初からオンライン授業に移行したり、サークル活動が中止になったりと、コロナ禍で大きな制限を余儀なくされた。そのため、採用面接でよく聞かれる「学生時代に力を入れたこと(略称ガクチカ)」が見つからないと悩む学生が多い。

 だが、華々しい活躍だけがガクチカではない。キャリア教育に詳しい流通科学大学の中山一郎教授は「日常での小さな気づきでもいい。自分で見つけられないのであれば、大学のキャリアセンターなどに相談し、学生生活を丁寧に振り返る機会を持ってもらいたい」と助言する。

 今年の採用日程は、6月に採用選考、10月に内定がそれぞれ解禁される。経団連に代わって今は政府主導で決めているが、形骸化が著しい。

 昨年、政府は従来の方針を転換し、現在の大学2年からインターンシップ(就業体験)での評価を採用選考で使えるよう関係省庁間の規定を変更した。大学3年夏のインターンシップが事実上の就職活動スタートとなる可能性がある。

 採用日程は、そもそも学業に充てる時間を確保するために作られた。就職活動が大学教育の空洞化を招くようであれば本末転倒だ。早期化への一定の歯止めが必要である。

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