世界銀行上級防災専門官の諏訪理(まこと)さんと日本赤十字社医療センター外科医の米田あゆさんの2人が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士選抜試験に合格した。日本で宇宙飛行士の候補者が新たに選ばれたのは14年ぶりだ。
2人は約2年間の基礎訓練を受ける。正式に宇宙飛行士として認定されれば、国際宇宙ステーションに滞在して活動するほか、米航空宇宙局(NASA)が主導する月探査のアルテミス計画に参加し、月を周回する基地「ゲートウエー」に派遣される可能性がある。月を目指す大きな挑戦を応援したい。
幼少時から宇宙に憧れ、努力を積み重ねて候補となった2人の姿は子どもたちの希望にもなるはずだ。
向井千秋さん、山崎直子さんに次いで3人目の女性飛行士となる米田さんは京都市の出身で、西宮市の神戸女学院中学部・高等学部を卒業している。勉学やテニスに打ち込み、常にチャレンジする生徒だったという。兵庫ゆかりの宇宙飛行士誕生に期待が高まる。3歳から小学5年までを兵庫県太子町で過ごした野口聡一さんに続いてもらいたい。
諏訪さんは東京大理学部や米プリンストン大大学院などで地球科学を学んだ。世界銀行では途上国の災害対策支援などに携わる。青年海外協力隊でルワンダに赴いたほか、世界気象機関に所属した経験もある。
米田さんは東京大医学部卒で、同付属病院を経て赤十字社で医師として活躍する。関心は医療分野にとどまらず、京都芸術大大学院の通信教育で、アートで社会の幸福度を上げる研究を働きながら続けてきた。
46歳の諏訪さんは候補者選出時の最年長、28歳の米田さんは山崎さんらと並んで最年少である。専門の分野も歩んできた道も全く異なる2人だが、個性的で多彩なキャリアは、宇宙での活動や研究にも生かされるに違いない。
飛行士は技術者、パイロット、医師などの出身が多い。JAXAは今回の募集で「自然科学系の大学を卒業」などの条件を外し、文系でも可とした。過去最多の応募者4127人から合格した2人は理系だが、米田さんは芸大生でもある。従来にない候補者となった意味は大きい。
NASAは2025年にアポロ17号(1972年)以来の月面到達を目指し、火星探査も視野に入れる。日本政府も日本人飛行士初の月着陸を20年代後半に想定する。米田さんは会見で「月食の日に、地球を月面から見るとどう見えるんだろう」と語った。月面に立ち、太陽を隠す地球を見るのも夢ではない。飛行士は大変な重責だが、人類全体に貢献する使命をぜひ果たしてほしい。








