社説

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 米中枢同時テロ後に、米国が主導する有志連合が始めたイラク戦争から20年がたった。

 フセイン独裁政権は開戦からほどなく崩壊したが、多数派のイスラム教シーア派とスンニ派との抗争が泥沼化し、イラク国内は内戦状態に陥った。過激派組織「イスラム国」(IS)も台頭し、テロが続いた。現在も政情は不安定なままだ。

 米国は、国連安全保障理事会決議など明確な根拠がないまま戦争に突き進んだ。ロシアによるウクライナ侵攻という新たな戦争が続く今こそ、当時の政治判断を検証する必要がある。

 米ブッシュ(子)政権は2003年、フセイン政権が国際テロ組織アルカイダと関係し、大量破壊兵器を保有していると主張して、英国などとともにイラクに侵攻した。だが大義として掲げた大量破壊兵器は見つからなかった。米兵4399人が死亡し、3万人以上が負傷したとされる。民間人の死者は最大21万人以上との推計もある。

 当時国務長官だったパウエル氏は開戦への演説を自らの「汚点」とした。戦争を誤りだったと考える米国民も多い。米政府は「大義なき戦争」との批判に真摯(しんし)に向き合ってもらいたい。

 日本も米英の武力行使を支持し、南部サマワに陸上自衛隊を派遣した。英国の独立調査委員会が「(任務は)成功から程遠い」と結論づけたのに対し、日本は「厳粛に受け止める」とした4ページの概要を公表したのみだ。総括は十分とは言えない。

 自衛隊は学校や道路の復旧、給水、医療活動などの人道支援に携わったが、現地には息の長い支援を期待する声がある。政府と民間でインフラ整備などを進め、復興を後押ししたい。

 イラク戦争によって米国の威信は失墜し、中東も不安定化した。武力で根付かせようとした西洋流の民主主義は機能せず、「フセイン政権の方がましだった」と嘆く市民もいる。正当な理由のない大国の軍事侵攻にはさまざまな代償がつくことを、この戦争は示している。

 国際社会の強い批判の中、ウクライナへの大義なき侵攻を行っているロシアは同じ過ちを繰り返してはならない。イラク戦争の教訓に目を向け、直ちに攻撃を中止すべきだ。

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