社説

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 米欧で銀行の経営危機が相次いで表面化している。各国の株式市場は急落し、世界経済に金融不安という新たなリスクを突きつけた。

 背景には、米欧の中央銀行が2008年のリーマン・ショック以来10年以上も続けてきた低金利政策の修正がある。それに対応する金融機関の戦略が裏目に出た。

 低金利政策の長期化や、その見直しが取りざたされる点は日本にも通じる。米欧の金融不安が直ちに飛び火するとは考えにくいが、各金融機関は改めて足元の経営状況を厳しく見直してほしい。

 混乱の引き金を引いたのは、米シリコンバレー銀行の破綻だ。破綻規模は史上2番目、リーマン以降では最大となる。

 債券投資で利益を上げていたが、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和見直しで市場金利が上昇したことから、保有する低金利の債券は値下がりした。顧客の預金引き出しに対応して債券を売却したため値下がりによる損失が表面化し、さらなる預金引き出しを招いた。

 米国では信用不安が飛び火し、別の銀行も破綻に陥った。スイスでは、最大手で経営再建中のクレディ・スイスの増資を筆頭株主が拒み、株価が暴落した。FRBが預金保護策を打ち出し、スイス政府が仲介してクレディ・スイスを別の大手銀行に買収させるなど、金融当局は混乱の収拾に全力を挙げている。

 それでも株安が続いているのは、金利上昇に伴う債券の含み損がどこまで金融機関を圧迫しているか、市場が疑心暗鬼に陥っているからではないか。FRBはインフレ収束を優先して利上げ継続を決めたものの、金融機関の経営にはより厳しく目を光らせねばならない。

 金融機関の債券頼みは日本も例外ではない。異次元緩和と称して日銀が長期金利を抑え込んできたが、世界的な金融緩和の見直しで債券値下がりに直面する。地域金融機関にとっては、地域経済の疲弊で有望な融資先の開拓が難しい点も債券への依存度を高めさせている。

 地方銀行99行の集計では、保有する外国債券と投資信託の含み損は昨年末に計1・5兆円と昨年3月末の10倍弱となった。日銀が低金利路線を修正するなら、含み損の拡大は必至だ。市場との対話を重ねながら慎重な政策運営に努める必要がある。

 地域を支える金融機関にとって重要なのは、世界的なマーケットのうねりをできるだけ避けながら、地元で資金を循環させることだ。

 米欧の混乱を教訓に、地域活性化事業への参画など社会課題の解決を商機につなげる方向へと、経営のかじを大きく切ってもらいたい。

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