地域独占体制に守られた時代の古い体質を引きずり、健全な競争に臨む意思すら持っていなかったのではないか。そんな疑念を抱かせるほどの悪質さである。
公正取引委員会は、オフィスビルや工場向け電力販売で、関西電力、中国電力、中部電力、九州電力の大手電力4社が、互いの顧客獲得を制限するカルテルを結んでいたと認定した。関電を除く3社に対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)で総額約1010億円の課徴金納付を命じた。過去最高額という。中国電力の社長と会長は引責辞任する。
カルテルを各社に持ちかけ、主導したのは関電だ。にもかかわらず行政処分を受けないのは、公取委の調査前に違反を自己申告し、課徴金減免制度が適用されたためである。
処分を免れたとはいえ、関電が電力自由化の趣旨を踏みにじり、顧客を欺いたことに変わりはない。しかも役員による金品受領問題の発覚を受け、法令順守の徹底を図っていた中でカルテルを続けていた。経営責任は厳しく追及されるべきだ。
公取委によると関電と3社は、遅くとも2018年10~11月にそれぞれカルテルで合意した。安値競争を避け、自社の利益を確保する狙いから、お互いに他社の区域で営業しないことや、他地域の官公庁の入札に安値で参加しないことなどを決めた。その結果、顧客が高い料金を払わされた可能性がある。
自由で公正な競争が行われていれば、異業種から参入した「新電力」が、燃料高騰などを理由に相次ぎ撤退する事態にならなかったかもしれない。当の電力各社も事業拡大の機会を自らつぶしたことになる。
さらに深刻なのは、業界団体「電気事業連合会(電事連)」が不正の温床になったと指摘される点だ。公取委は、会合の前後にカルテル関連の情報交換が行われたとみて、電事連に再発防止の周知徹底を申し入れた。業界団体の在り方も旧態依然としていたのではないか。
電力業界では、大手電力7グループが新電力の顧客情報を不正に閲覧していた問題が、既に判明している。経済産業省は、特に悪質と判断した関電や九電など5社に対し、業務改善命令を出す方針だ。業界全体の体質が問われている。
地に落ちた信頼を回復するには、業界を挙げて各社の組織風土の改革を進める努力が欠かせない。大手電力の多くは家庭向け電力料金の値上げを申請中だ。一連の不正に関する説明すら不十分なままでは、消費者の理解は到底得られまい。
不正がまん延した責任の一端は、国にもある。監視体制の検証と強化を急がねばならない。
