社説

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 地方銀行の再編が相次いでいる。2021年に経営統合を決めたのは三重銀と第三銀、福井銀と福邦銀、青森銀とみちのく銀、愛知銀と中京銀で、22年が八十二銀と長野銀、ふくおかフィナンシャルグループと福岡中央銀が、今年は横浜銀と神奈川銀が続く。

 背景にあるのは、地域経済を取り巻く環境の厳しさだ。新型コロナウイルス禍対応の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)などの支援策で破綻は低水準に押さえられてきた。ここへきて返済時期を迎えたことに加え、歴史的な物価高も企業の経営体力を奪いつつある。22年度の企業倒産は3年ぶりに増加に転じた。企業経営は正念場を迎えたと言ってよい。

 産業と金融は車の両輪だ。地域経済が弱れば、金融機関の経営も脆弱(ぜいじゃく)になる。実際、地銀の過半数が22年4~12月期決算で減益か赤字となった。状況が厳しい時ほど、金融機関は経営基盤を強化しながら、きめ細かな施策で地元企業を下支えしなければならない。

 気になるのが金融政策の動向だ。日銀は昨年12月、長期金利の上限を引き上げ、事実上の利上げに踏み切った。長期金利の上昇は貸し出しの利ざやの改善につながる一方、大量保有する日本国債の価格下落を招き、経営のリスクになるのは避けられない。日銀の植田和男新総裁はどうかじ取りをするのか。金利変動への備えを強化すべきだ。

 金融再編の歴史を振り返ると関西は1990年代以降、「破綻の火薬庫」と呼ばれ、経営危機に陥る地銀や信用金庫が相次いだ。破綻・再編を重ねながら、関西の地域金融界は今は落ち着きを見せている。

 一方、コロナ後もにらんで、メガバンクが地域戦略を加速させている。地銀や信用金庫との競争はさらに激化するだろう。人口減や少子高齢化、地場産業の衰退、中心市街地の空洞化などで地域経済を取り巻く情勢は大きな変革期にある。

 地域金融の原点に立ち返るときだ。行員や職員は積極的に街に入り込み、企業や市民の需要をつかんでほしい。「経済の血液」が円滑に循環してこそ地域は再生する。金融機関が果たすべき役割は重い。

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