アフリカ北東部のスーダンで内戦が激化し、大混乱に陥っている。民間人が戦闘に巻き込まれて死亡し、停電や断水に加えて食料、医薬品が不足するなど極めて危機的な状況だ。
在留邦人を保護するため、政府は自衛隊機3機を近隣国ジブチに派遣した。60人以上の退避希望者全員が無事出国できた結果にひとまず安堵(あんど)する。
2年前にアフガニスタンでイスラム軍事組織タリバンが首都カブールを制圧した際、自衛隊機の派遣が遅れた。政府はその教訓から早期に派遣を決めたが、自衛隊による邦人の陸上輸送は実施できなかった。
大半の人は、自衛隊機が待機するスーダンの港湾都市まで他国の車両に同乗するなど、それぞれの判断で危険な陸路を移動した。それが実情のようだ。
退避には国連機関や国際赤十字、韓国、ドイツ、米国、カナダや現地の人々などの尽力があったことを、感謝とともに記憶にとどめたい。
アフガン政変時の邦人保護対応で批判を浴びた政府は自衛隊法を改正し、「安全に実施できる」としてきた自衛隊機派遣の要件を「危険を避けるための方策を講じることができる」場合に緩和した。ただ、同時に隊員の安全も確保しなければならない。今後も自国だけで対応が困難な場合はあるだろう。
そのためにも、国連機関や友好国、非政府組織(NGO)などと協力関係を築いておくことが重要だ。平時から人道支援などの「ソフトパワー」で、日本の存在感を発揮したい。
独裁政権が約30年続いたスーダンでは軍と民主派が暫定政府をつくったが、軍が2年前のクーデターで実権を握った。現在は政府軍と並ぶ軍事組織「即応支援部隊(RSF)」が対立し戦闘を繰り広げている。
現地では、コレラ菌などが保管されている研究所が軍に占拠され、病原菌流出が危惧される事態に陥っている。感染症が拡散する「生物災害」を防ぐためにも、国際社会が結束して停戦の圧力を強めねばならない。
日本には避難民など傷ついた人々に寄り添う、きめ細かな支援のノウハウと実績がある。食料、医薬品の提供などの準備を今から官民挙げて進めよう。
