社説

  • 印刷

 物流業界が「2024年問題」への対応に迫られている。同年4月から、トラック運転手の時間外労働に年間960時間の上限規制が適用されることで、人手不足の深刻化や輸送量の減少が懸念されている。運転手の健康や生活向上を最優先に、円滑な物流を維持するために官民挙げて対策を進めるべきだ。

 政府は19年施行の改正労働基準法で「働き方改革」を強化した。ただ全産業の中でも長時間労働が常態化しているトラック運転手の残業上限については、適用が5年間猶予されていた。

 上限規制の適用に伴い、輸送能力が低下し、荷物の配達遅れなどの混乱が生じる恐れがある。野村総合研究所の試算によると、25年には全国の荷物総量のうち約28%、30年には約35%が運べなくなるという。

 物流会社は人材の採用を強化しているが、慢性的になり手が足りないのが現状だ。トラック運転手の年間所得額は全産業平均と比べ5~12%低いとされ、上限規制の導入により、収入がさらに減る可能性もある。

 国内のトラック事業者は中小企業が大半を占める。大企業などの荷主に比べて立場が弱く、原材料費高騰に伴う価格転嫁の交渉に応じてもらえないなどの弊害が指摘される。荷主側が適正な対価を支払うなど、従来の対応を改めて運転手の待遇改善にもつなげなければならない。

 業務の効率化も重要だ。長距離輸送ルートに中継地点を設けて複数の運転手が担うことや、鉄道や船に輸送を移し替えるなどの対策を進め、労働時間の短縮を実現したい。政府も、改善計画策定を荷主に義務付けるなどの対応策をまとめる方針だ。積み降ろしの順番を待つ時間の削減などを想定する。

 消費者の側も意識改革を迫られる。政府は4月、宅配便の「再配達削減PR月間」を設けた。インターネット通販の普及もあり、運転手が何度も訪問を強いられる再配達が負担となっている。宅配ボックスの活用や、まとめ買いで配送回数を減らすなどの工夫が求められる。

 物流の混乱は、経済だけでなく国民生活全般に多大な影響を及ぼす。健全な労働環境を守るために、社会全体で危機感を共有する必要がある。

社説の最新
 

天気(10月27日)

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 20℃
  • ---℃
  • 50%

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 23℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ