社説

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 福井県敦賀市にある日本原子力発電敦賀原発2号機の再稼働に向けた審査について、原子力規制委員会が申請書の一部を修正し、8月末までに提出し直すよう行政指導した。約2年間中断した審査が再開したところだったにもかかわらず、原電の資料に誤記などが見つかり、再び審査ができない状態になった。

 今回の方針は、委員5人が一致して決めた。審査の再中断は極めて異例の事態である。山中伸介委員長は「書類をチェックする体制ができていない。これが最後のつもりで臨んでほしい」と述べ、今後の対応によっては再稼働を許可しない可能性も示唆した。原電は規制委の指摘を重く受け止めねばならない。

 東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえた新規制基準では、活断層の真上に原発の重要施設を設けることを禁じている。敦賀2号機では、規制委の有識者調査団が2013年、原子炉直下の断層(破砕帯)が将来動く恐れのある「活断層」だと評価した。原電はこれに反論し、15年に再稼働の審査を申請した。

 ところが審査資料でミスなどを繰り返した。19年、地震や津波対策の資料で千カ所以上の記載不備が見つかり、20年には地質データで80カ所の無断書き換えが判明した。原電は意図的な改ざんではないと釈明したものの、審査は同年10月から事実上の中断を余儀なくされた。

 看過できないのは、昨年12月の審査再開後も原電の不適切な対応が改善されていない点だ。断層の活動性を否定する資料を根拠も示さずに157カ所修正したほか、今年に入って8カ所の誤りが分かった。規制委事務局の内部で「これでは全く信用できない」との声が上がるほどだ。審査に臨む姿勢そのものに問題があると言うほかない。

 原電は再稼働の申請書を補正すると表明した。再中断後の審査で活断層の存在を否定するとみられる。しかし、たとえ活断層がなかったとしても、現状の原電では原発を稼働する資質を疑わざるを得ない。渕上隆信敦賀市長も「組織的な欠陥があるのではないか。不誠実と感じる部分がある」と不信感を隠さない。

 1957年設立の原電は、66年に商用初の東海原発(茨城県)の運転を始めた。原発専門の発電会社で、電気が売れなくても供給先の大手電力会社から維持費に相当する「基本料金」を受け取っている。

 現在所有するのは、敦賀2号機と東海第2原発のみで、いずれも停止中だ。これが再稼働できなければ、会社の存立すら危ぶまれる。原電は自らの存在意義が問われていると自覚し、組織の在り方を根本から再検討する必要がある。

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