近畿や関東、東北地方など17都府県で高級車を繰り返し盗んだとして、兵庫、千葉、埼玉県警が31日までに、窃盗などの疑いで、堺市堺区の会社員の男(38)とさいたま市浦和区の無職男(43)=窃盗罪などで公判中=を逮捕、送検していたことが捜査関係者への取材で分かった。兵庫県警などは単独分も含めて2人が2016年4月~21年2月、トヨタ製の高級車レクサスなど計192台の窃盗に関わったとみており、総額約9億5千万円の被害を裏付けたとしている。
捜査関係者によると、このうち5件(計約2800万円相当)を送検し、2件(計約740万円相当)が起訴された。
起訴状によると、男2人は20年12月と翌21年2月、千葉県柏市の駐車場で、レクサスRX(時価約490万円相当)とクラウン(同250万円相当)を盗んだなどとされる。
2人は起訴内容を認めており、県警などの調べに「遊ぶ金や生活費が欲しかった」と話しているという。
公判や捜査関係者によると、2人は盗んだレクサスを運転して千葉県の業者に売却。その後、近くでクラウンを盗んで「調達」し、大阪まで運転して帰ったという。ほかにも約2200万円相当のレクサスLXや、アルファードなどの高級車を狙って自動車盗を繰り返した疑いがある。
会社員の男は19年12月に大阪府和泉市内で職務質問中、車に乗りこんで逃走。その際、捜査員や捜査車両に衝突させたとして今年2月、兵庫県警に公務執行妨害容疑などで逮捕されていた。
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■モバイルバッテリー型の特殊機械使用か、逮捕は全国初
会社員の男らが逮捕された高級車窃盗事件。捜査関係者によると、「モバイルバッテリー型システム侵入ツール」と呼ばれる小型機械が押収され、車を盗むのに使われた疑いがある。電子制御された車のシステムを破る手口は全国で相次いでいるが、この特殊な機械を使ったとみられる容疑者の逮捕は全国初だという。
カーセキュリティー用品販売業「エクセルオーディオ」(神戸市西区)によると、この手口は車の内部に張り巡らされたCAN(キャン)というネットワークシステムに侵入して不正に動作させるもので、「キャンインベーダー」と呼ばれる。
キャンは本来、エンジン制御や故障診断などに使われるシステムだが、男らは車のバンパーを外し、内部の端子に機械を接続。不正な信号を送ってわずか数分でドアを解錠し、エンジンを起動できたという。
タイヤロックなどの対策をしていても盗まれるケースはあるといい、同社は「人気の高い車種ほど、不正な動作を検知する最新の防犯システムが必要」と自衛策を呼び掛けている。