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兵庫県警が摘発した「道具屋」集団が開設したペーパーカンパニーのホームページ(画像の一部を加工しています)
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兵庫県警が摘発した「道具屋」集団が開設したペーパーカンパニーのホームページ(画像の一部を加工しています)

 高齢者らを狙う特殊詐欺に関わる犯罪グループが、役割を細分化している。電話をかける「掛け子」や、キャッシュカードを受け取る「受け子」といった実行犯に加え、金融機関の口座や携帯電話を調達販売する「道具屋」、被害者となる人の個人情報を提供する「名簿屋」と呼ばれる集団が登場。道具屋や名簿屋は首謀者を特定させずに、被害を拡大させる助長犯とされ、警察が捜査に力を入れている。

 「ナイスなファッションを提案」。「合同会社ナイス」の社名の下に、簡素なうたい文句が躍る。事業内容は「アパレル製品の販売」「広告代理業務」など、最低限の表記しかない。

 県警によると、このホームページの会社は、県警が摘発した詐欺事件で「道具屋」役が設立したペーパーカンパニーだったという。川崎市のアパートを所在地に正規の法人登記がされたが、事業実態はない。会社の法人口座を開設する際に銀行を信用させるため、ホームページが用意されたとみられる。

 銀行の審査をすり抜けて作られた法人口座は、後に別のグループが起こした投資詐欺事件で被害金の振込口座に使われた。

 県警がグループの中心とみられる東京都の男(39)の自宅を捜索したところ、ペーパー会社の登記申請書類や、約30台のスマートフォンを発見。男らは法人やスマホの転売をなりわいとし、金融機関口座は知人を介して、一つにつき20万円で販売していたという。

 このグループは、ホームページの作成や口座開設の申請、名義貸しなどを役割分担し、本名も明かさない徹底ぶり。登記されたペーパー会社は少なくとも11社に上り、作成口座には詐欺事件で詐取されたとみられる計3億円以上が振り込まれた形跡があったという。

 犯罪に使われた口座は被害が発覚すればすぐに凍結されるが、次々に生まれ、いたちごっこになっている。会員制交流サイト(SNS)のツイッターなどでは、口座売買をにおわす投稿も確認できる。県内金融機関の担当者は「登記書類やホームページなど必要な資料がそろっていれば、犯罪利用を見抜くのは簡単ではない」と明かす。

 警察庁によると、昨年の特殊詐欺事件の認知件数は全国で1万3550件、被害額は約285億円だった。事件を助長する道具屋などへの捜査は強化され、口座や携帯電話の不正な売買で年間2千~3千人が摘発されている。

 県警幹部は「道具屋の用意したツールが役割を分担された人間同士のつながりを見えにくくし、首謀者の特定を困難にしている」と指摘している。

 

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