兵庫県加東市黒谷の遊園地「東条湖おもちゃ王国」の立体迷路施設で床が抜け、階下に落ちた客6人が重軽傷を負った転落事故で、木造5階建ての立体迷路施設は屋根がなく、建築基準法に該当しないことが兵庫県などへの取材で分かった。同法上の構造物とみなされないため、立体迷路の設置時は性能や安全性をチェックする建築確認申請は求められず、日常の安全点検も施設側の独自基準で行われていた。
事故は10日午後、木造5階建ての「カラクリ迷宮のお城」の3階で床が抜け落ちて起きた。親子ら7人が約2・4メートル下の2階に落ち、うち女性(27)と男性(24)が腰の骨を折る重傷を負った。床板を支える梁が腐食していた可能性があり、兵庫県警は業務上過失傷害容疑で施設の構造や保守管理の状況を調べている。
県北播磨県民局によると、建築基準法に該当する場合は、建築時に県への確認申請が必要となり、一部構造物は報告義務などがある。遊園地のジェットコースターや観覧車は準用工作物として建築確認が求められるが、事故が起きた立体迷路は屋根がなく、すのこのように板を敷き詰めた床は雨よけにならないため同法の対象外だった。
同県民局加東土木事務所の担当者は「建築確認申請は必要ないとの判断」とし、おもちゃ王国の関係者も「設置の際、メーカーとの協議で申請は必要ないとの認識だった」と話す。
事故を受け、同土木事務所と北はりま消防本部は12日、同法の対象となるおもちゃ王国内の売店やレストランなどを立ち入り調査。しかし、立体迷路については権限がないため、周辺でおもちゃ王国側から説明を聞くだけにとどまった。
一方、おもちゃ王国は点検項目を作成。月1度の定期点検では、メンテナンス担当の従業員が迷路施設内を歩いて床板の音を確認し、腐食部分やゆがみなどの有無をチェックしていた。
メーカーが同じで、2014年に同様に床が抜け、2人が負傷する転落事故が起きた「軽井沢おもちゃ王国」(群馬県嬬恋村)の立体迷路は木を接合するねじの劣化が原因だった。メーカーは設置、保守について行政機関への届け出はしていなかったという。
1級建築士で建築計画が専門の関西国際大学現代社会学部の田中栄治教授(54)は「この法律は災害や事故があるたびに安全基準が強化されてきた。不特定多数の人が集まる施設では安全管理は徹底されるべきだ。何らかの法基準に適用される必要があると思う」と話している。(中西大二、前川茂之)