2020年10月、神戸市北区のヤマト運輸集配所で元同僚の男女2人を包丁で殺傷したとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われた同社の元パート従業員、筧真一被告(47)の裁判員裁判が3日、神戸地裁であった。野口卓志裁判長は「執拗かつ残忍な犯行。計画性の高さも顕著」と、懲役27年(求刑懲役28年)の判決を言い渡した。
判決によると、筧被告は20年10月6日未明、同市北区山田町小部の集配所で、従業員の女性=当時(47)=の胸や腹などを包丁で刺して殺害。男性従業員(61)も刺殺しようとして手に軽傷を負わせた。その後、車を運転し、集配所内の壁や車両14台、駆け付けたパトカーに相次ぎ衝突させた。
筧被告は事件前日、職場で男性ともみ合いになり、仲裁した女性を負傷させ、会社を退職していた。野口裁判長は「被告は、被害者2人が結託して辞めさせるように仕向けたと思い込んだ」と認定。被告が女性に恋愛感情を持っていたとし、「愛情の裏返しとしての憎しみ」から殺害を決意したと判断した。
その上で「実際には結託はなく、被害者には何ら落ち度はない」と強調。退職時の上司の不適切な対応を受けて、筧被告が怒りや女性への不信感を募らせた点は認めつつも、「殺害という重大な決意には大きな飛躍があり、酌量すべき程度は小さい」とした。
判決で裁判長は「殺人を『何とも思わない』と述べるなど、被告に反省の態度は見られない」と指摘した後、「自分の罪を受け止めるようになってほしい」と説諭した。筧被告は「何のことかさっぱりだ」と応じた。