三田

観音さま?森の精霊? 大池の水辺に乱立する謎の植物

2021/05/15 05:30

 「これ観音さまに見えへん? 私が勝手に思ってるだけやけど、いつも手を合わせてるんよ~」

 兵庫県三田市母子の母子大池のほとりを歩いていると、地元の人が小川を指さし、教えてくれた。そこには15~30センチほどの木のような植物が乱立している。先端が頭のように丸くなり、うつむき加減のものや、てっぺんに膨らみが付いたものなど、言われてみれば確かにそう見えてくる。

 数えただけで100本はある。「百観音や」。そう笑うのは、近くに住む女性(69)。お気に入りの散歩スポットで、この不思議な植物に癒やしをもらっているんだとか。

 辺りは緑に囲まれて、鳥のさえずりだけが聞こえる。透き通った水辺にあり、ジブリ映画「もののけ姫」に出てくる森の精霊「こだま」のようにも見えてきた。

 ぼーっと眺めていると、仕事中に異世界へ迷い込んでしまったのかも…と思ったが、気を取り直して正体を探った。

 県立人と自然の博物館(同市弥生が丘6)の小舘誓治研究員(59)=植物生態学=に「水辺にニョロニョロした植物がたくさん」「観音様のような」と曖昧な特徴だけ伝えると、「人の体の部位にも見えてきませんか。膝小僧とか」と、もう見当が付いているよう。写真を見せると確信に変わった。

 「周辺の木からしても、やはりラクウショウの呼吸根(こん)だと思います」

    ◇

 ラクウショウは北米原産の落葉針葉樹で、ヌマスギともいう。観音様のように見えた木々は、そのそばに生える木の根の一部だった。水辺に近い湿地などに生息しており、地中の空気が少ないため、地上に「呼吸根」を出して呼吸している。

 呼吸根は気根の一種で、その見た目から「膝根(しっこん)」とも呼ばれる。「膝の例えはあったけれど、観音様みたいと聞いたのは初めて」と小舘さん。「きれいな水辺で手を合わせたくなる気持ちも分かりますね」と想像力に感心していた。

 取材後、意気揚々と近くに住む女性に真相を伝えると「知ってたよ~。根っこでしょ」ときょとん。もっと勉強しなければと、膝を正した。(喜田美咲)

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