兵庫県三田市尼寺、県道沿いの畑に季節ごとに替わるかかしがいる。昨年末はサンタクロースとトナカイ。今の季節はおひなさま。どれも顔が「へのへのもへじ」なのが昔懐かしい。小柿や小野など市内各地でかかしを取材した記者として、ここは押さえておかねば。周囲に聞き込みをして、制作者を訪ねた。(喜田美咲)
手掛けたのは、畑の近くに住む井上敏子さん(79)の長女、佐良清美さん(55)=神戸市北区。佐良さんは母の畑仕事を手伝いによく実家を訪れている。
昨年11月末にクリスマス仕様のかかしから始めて、年明けには干支(えと)のトラ、2月は節分の鬼と、季節行事ごとに作り替えてきた。
始まりは井上さんの提案から。昨秋に開かれた小野のかかしコンテストを見て「子どもが遊んでいるみたいににぎやかで、楽しそうだった」。11月ごろ、畑に里芋を伏せ込むわらの山を作ったとき、周囲に何か飾れないかと考えて、かかしを思い出した。
幼稚園の教諭をしている佐良さんに制作を依頼。普段から工作などの手仕事は好きだといい、「次は何にしようか」と楽しみながら作っている。
材料には、野菜や農業用品など、身の回りにあるものを使う。トナカイの角にはナスの枯れ枝がぴったりだった。肥料の入っていた黄色いポリ袋にガムテープを巻いて、トラのしま模様にした。リアル過ぎると怖がられるかもしれないと思い、顔はかかしらしく「へのへのもへじ」で描いた。赤い袋をまとったサンタは、麦わら帽子に背負いかごと、農家の味わいも出した。
近所の人が井上さんと間違えて話しかけそうになるほど、畑の中で目立っており、次回作を期待している人も少なくない。佐良さんは「地元野菜の宣伝も兼ねて、まず1年は続けてみたい」と話した。