段々の田んぼの間に1軒の工場が立つ。中には大豆のほっくりとした香りが漂う。「三田のとうふ 福井」で知られる豆腐製造会社「福井食品」(兵庫県三田市大川瀬)は、創業71年を迎えた。国産大豆で作る濃厚な味わいが評判で、朝から客が買いに訪れる。昔ながらの手法を残しつつ、季節限定の味やスイーツなどの新商品を生みだし、試行錯誤を続けている。(喜田美咲)
午前4時半、工場が動き出した。2代目社長福井健一郎さん(55)と妻泉さん(55)、従業員が持ち場で黙々と手を動かす。
型から取り出した白い塊がつるんと水の中へ落ちる。そっと支えて等間隔に切り、容器の中へ収めていく。木綿や絹、厚揚げにがんもどき。常時30種類ほどの商品を作り、工場で直売するほか、市内のスーパーや福祉施設、近郊の道の駅などに出荷している。
機械を使わず、手でにがりなどの凝固剤を混ぜて固める「手寄せ」の手法にこだわる。ひいた大豆を煮て、おからと豆乳に分ける。豆乳ににがりを入れたら時間勝負。一瞬腕に力がこもる。上半身を大きく上下させて専用の器具で一混ぜする。
「ほんまに最近、ようやくやりたいことができるようになってきた」と健一郎さん。その日の天気や気温を見て、豆を煮る時間や混ぜる凝固剤の量を変える。30分後に同じ量で作っても、うまくいかないことがある。固まった豆乳をすくってはメモを取り、感覚をつかむことの繰り返し。何度もめくったノートは色あせ、ぱりぱりだ。
□ □
福井食品は1951年に、健一郎さんの父信之さんが開いた。信之さんはもともと、大川瀬で身内が営む高野豆腐の製造所に勤めていた。工場を閉じることになった際に機械を譲り受け、途中までの工程が同じだった豆腐作りを始めたという。
健一郎さんは大学を卒業した90年に、父とともに働き出した。「継ぎたいという強い気持ちがあったわけではないけれど、小学生の頃から手伝っていたし、やろうかなって」。手取り足取り、というようなことはなく、見よう見まねで腕を磨いた。
96年に現在の場所へ工場を建てた。しかしその翌年、信之さんが急病で他界した。「突然のことだったし、まだ勉強不足だった」。後を継いだが、直後に「これまでと味が違う」といった意見がはがきで届いた。「おしかりを受け、電話が鳴るのが怖かった」
支えになったのが妻の存在だった。勤めていた会社を辞め、経営方法やメニュー拡大を助言してくれた。泉さんの提案で、絹ごし豆腐で作る絹揚げやがんもどきといった揚げ物にも力を入れるようになった。じゅわっ、もちっとした食感が楽しめるとして、今では看板商品になった。
「さらに自分の作りたい味を」と大豆を100%国産に変えた2018年、壁にぶつかった。加熱時間や凝固剤の量など、これまでと同じでは作れなかったが、どう変えればいいかさえ分からなかった。食感も思うように決まらず、得意な揚げ物すらうまくいかなくなった。「作っては捨てての繰り返し。『これじゃあかん』とゼロから勉強し始めた」。失敗するたびに機械や凝固剤のメーカーにも尋ね、性質を教わった。ノートに記録することも始めた。最初はよく分からないままだったが、次第にメモする内容が増え、先が見えるようになった。数年が経過し、ようやく自分の味が出せたと感じている。
□ □
午前8時、工場の小窓からなじみの客が顔を見せる。直売所では商品のほか、端が欠けたアウトレット品を販売しており、開店と同時にやってくる人もいる。近くに住む女性(68)は冷蔵庫になくなったらすぐ来るといい「ここの寄せ豆腐は濃厚でおいしくて、もう他には戻れない」。親戚に勧めると、遠くから買いに来るようになったという。
最近は泉さんらの考案でおからを使ったケーキや豆乳プリン、七味唐辛子入りのピリ辛豆腐など、メニュー開発も進む。「食いしん坊やから、自分が食べたい物を作っているだけやけどね」と泉さん。健一郎さんは「今になってちゃんと周囲への感謝を感じられるようになった」と照れ笑い。もがいてきた時間を思い出すように「今の方が断然ええ味」と胸を張った。
直売は午前8時~午後1時で水、日曜が定休。福井食品TEL079・568・1722

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