山椒魚(さんしょううお)は悲しんだ。
とは、井伏鱒二の短編「山椒魚」の有名な書き出しだ。1929年に同人誌に掲載されて以来、国語の教科書で取り上げられるなど広く読み継がれている。
つぶれたまんじゅうのような顔に、大きく裂けた口。肌を埋めるイボの隙間には、ゴマ粒ほどのつぶらな瞳が付いている。手足は極端に短い。異形だが、どこか愛嬌(あいきょう)を感じさせる。
オオサンショウウオには人を引きつける何かがあるのだろう。文学的な表現で知られる漫画家つげ義春さん(85)は67年、下水道に住み着いたオオサンショウウオを題材にした作品を発表している。兵庫県三田市でも古くから親しまれ、尼寺(にんじ)を舞台にした民話にも登場する。
「生きた化石」と呼ばれ、両生類では世界最大だ。大きなものは1・5メートルを超え、100年ほど生きるともいわれる。食べるのは虫や小魚、カエルなどにとどまらず、ブラックバスやヌートリアまで及び、腹の中からシカの胎児が見つかったケースもあった。河川における生態系の頂点に立つ。
古老の耳打ち
そのオオサンショウオを、かつては人間が食べていた。筆者は若い頃の赴任先で、地元の古老から「昔は取っ捕まえて食べていたもんや」と耳打ちされた。別の記者は他の地域で、わらで丸焼きにして食べたというエピソードを聞いたという。
美食家としても名高い陶芸家、書家の北大路魯山人(1883~1959年)は随筆で「食った」とし、「名実ともに珍味に価(あたい)する」と記した。調理の際は頭に一撃を食らわして気絶したところをさばき、「腹を裂いたとたんに、山椒の匂(にお)いがプーンとした」。
スッポンのように煮ると肉も皮も固くなり、2、3時間たっても一向にやわらかくならない。ともかく長い時間をかけて煮込んだところ、ようやく歯が立つようになり、「ひと口食ってみたら、味はすっぽんを品よくしたような味で、非常に美味であった。汁もまた美味(うま)かった」という。
味については「すっぽんとふぐの合の子と言ったら妙な比喩であるが、まあそのくらいの位置にある美味と言うことができようか」とも絶賛。次の日には一層おいしくなっており、「ひとたび冷めてみると、ふしぎなことに非常にやわらかくなる。皮などトロトロになっている。そして、汁も翌日のほうがはるかに美味い」。
「国宝級」の生き物
もちろん現在は食べることを禁じられており、重い罪に問われることになる。天然記念物は文化財保護法で許可なく現状変更(捕獲や移動など)をすることが禁止されており、違反すると5年以下の懲役もしくは禁錮、100万円以下の罰金が科せられる。
実際、文化財保護法違反の罪に問われた事件では、実刑判決が下ったケースがある。2010年、天然記念物の「奈良のシカ」に矢を放って死なせた男に対し、奈良地裁は懲役6月を言い渡した。21年には奈良のシカをおので殴って死なせた男が懲役10月、保護観察付き執行猶予3年の判決を受けた。
天然記念物の中でも「特に重要」な特別天然記念物に指定されている動物は、21件しかない。コウノトリやトキ、イリオモテヤマネコなどで、両生類はオオサンショウウオだけだ。まさに「国宝級の生き物」(兵庫県自然保護協会の大沼弘一調査部長)なのだ。
そのため各地で環境団体や自治体が保護、研究に取り組んでおり、羽束川(上流の天王川含む大阪府能勢町から丹波篠山市、三田市、宝塚市)では約1200匹が確認されている。三田市内でも年に3~4回は「用水路に迷い込んでいる」などの通報があり、同協会のメンバーらが個体確認をし、安全な場所へ移動や保護を行う。三田市文化スポーツ課の担当者は「迷い込みやけがなど困っているオオサンショウウオを見つけた場合は触らず、自治体の文化財担当課に連絡して」と呼びかけている。(土井秀人)
【オオサンショウウオ】オオサンショウウオは日本固有種のほか、チュウゴクオオサンショウウオ、アメリカオオサンショウウオがいる。欧州の3千万年前の地層からほぼ同じ姿の化石が見つかっていることから、「生きた化石」と呼ばれる。日本固有種は西日本の中国山地などに生息。地方によって呼び名はさまざまで、ハンザキ、ハンザケ、アンコ、ハダカスなどがある。1952年、国の特別天然記念物に指定された。絶滅の恐れのある野生動物に対する「種の保存法」でも捕獲、譲渡、販売などが規制されている。

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